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2005年9月25日 (日)

教科書・試験問題における著作物の利用の二次利用

アサヒコムの本日発信の記事に著作権管理団体である「株式会社・日本ビジュアル著作権協会(JVCA、曽我陽三理事長)」の会員の作家の作品が、学校現場で非常に使いにくくなってきているという話が出ている。

http://www.asahi.com/life/update/0925/003.html

仕組みはこうだ。

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●教育現場に文章を送り出す側の事情

1-a. 大学などが作家の作品を入試に使う。これは著作権法36条で「事前許諾不要、補償金不要」で利用できる。

1-b. 教科書会社が作家の作品を検定教科書に載せる。これは著作権法33条で「事前許諾不要、補償金必要」で利用できる。

●文章を送り出された教育現場の事情

2-a. 入試問題集などを出版する出版社は、業界団体と契約をしない限り、本来は利用できないが、従来は暗黙の了解状態で利用されてきていた。

2-b. 学校での期末試験問題などは、教科書を一部利用して問題を作ってきた。

●コンプライアンス(遵法)の浸透による変化

3-a. 2ちゃんねるなどの通報系メディアが浸透してきたことでマスメディアも通報主義に走り、マスメディアが微罪を大きく報じるようになってきた。

3-b. インターネットを利用した著作物の海外からの監視が常態化し、著作物の利用への注意意識が向上してきた。

●社会の変化

4. 作家側の知的財産の経済的価値に対する意識が変化してきた。また、最近の税制の変化などに象徴されるように、所得の2分化が始まり、「勝ち組作家」になりたい作家も増えてきた。(例えば、当該アサヒコムの記事の松谷みよ子氏の発言。)

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以下に私見を述べる。

権利者が「入試問題に使われることは名誉、教材に使われることは不名誉」と主張しても、僕には「入試問題にタダで使われることも防ぎたいが、法律があるので渋々認める。教材にタダで使われることは法律で防げる。使わせないのではなく、お金をもらうことが重要」と聞こえる。ゴチャゴチャいわんと短くいえば「名誉より金」という作家・出版社側の狙いと写る。

ところで、例えば「Aさんの詩は、入試問題正解集で読んだから、本を買わなくてもいいや。」なんて受験生が考えるだろうか?むしろ、「入試問題正解集で真剣に読んだら感動したので、大学生になったら本を買って読んでみよう」というのが普通だろう。

もし、ある受験生が来年受験したいX大学で谷川俊太郎(JVCA会員)の詩が出て、入試問題集を買ったら【この部分は谷川俊太郎の『〓〓〓』が全文掲載されていますが、著作権法の規定とJVCAとの取り決めにより、本問題集には掲載できません。】と書かれていたら「谷川俊太郎の作品なんて二度と買うもんか!」と怒りながら、その受験生は古本屋か図書館を利用するに違いない。

ということで、入試問題に関わる方にお願いがある。かかる著作権管理団体の会員の作品は入試に使わないようにして頂きたい。入試問題に文章が必要なら、死後50年を越えた作家のものを選ぶか、文学部の先生に書き下ろしてもらえばよい。フリー文書で、そのように使えるものもあるに違いない。

さらに、教科書製作会社のみなさんにもお願いがある。かかる著作権管理団体の会員の作品は教科書に掲載しないようにして頂きたい。教科書に文章が必要なら、教育活動における「避け難い著作物の利用」(例えば学校での定期試験追記参照)を無償で認める作家の作品を利用すればよい。

入試に使われた文章が入試問題集に使われ、あるいは、教科書に使われた文章が定期試験で使われることで、僕は、小学生から高校生の間、その文章を真剣に読んできた。もし、「作家の本を買わないと試験対策ができない」あるいは「問題集は著作権料の支払が済んだ高価な本である」という状況だったら、まずしかった我が家は国語の期末テスト対策も入試対策もできなかっただろう。教科書とテストと入試問題集と入試問題で触れることで、大人になって、その作家の本を買ったり読んだりするようになったのである。

「子ども達に限り、私の作品の一部を真剣に読む機会を、私は無償で提供する」という姿勢の作家が一人でも多く増えて欲しい。大人になった僕は、そんな作家の本なら、新刊で、書店で買いたい。

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【追記】「学校での定期試験」は、もともと35条Okでした。うっかりしてました。試験対策として、先生自らプリントを作成して、生徒に配布して授業後に回収しないと、現行法ではまずいような気がしますね。それを無償で認める作家の作品であると分かっていたら、配布して回収せずにすみます。

それから、塾や予備校や参考書の扱いとか、微妙ですね。

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コメント

大人だけど、実際に教科書を手にとって見てみたいと思ったことはないでしょうか?
先日教科書の購入方法について、簡単に調べ、まとめた記事を書いてみました。
こちらのBlogとは趣旨の異なるBlogですが、参考にしてくだされば幸いです。
http://www.bookrev.info/archives/50200155.html
http://www.bookrev.info/

投稿: 実際に教科書を手にとってみてみるには | 2005年11月27日 (日) 12:36

コメントありがとうございます。

実際の教科書は、一般には入手しにくいですよね。情報科教育法の学生に買ってもらおうと思ったときに調べたのですが、実はかなり面倒だということは知っています。

ちなみに僕は仕事柄、教科書を大量に見ています。また、ある時期には「すべての教科書が並んでいる部屋」に定期的に出入りしていたりもしました。

投稿: たつみ | 2005年11月27日 (日) 12:44

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日本ビジュアル著作権協会(JVCA)と受験問題集出版社との争いについては旧Wikiの2005-05-01にも書いたが,今朝の朝日新聞に国語テスト、消える長文 著作権理由で訴訟もという記事が。何か [続きを読む]

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九鬼周三、末弘 厳太郎、寺田寅彦、泉鏡花、夏目漱石、高村光太郎、西田幾多郎、岸田劉生、河上肇、中井正一、岡倉天心、折口信夫、萩原朔太郎、有島武郎、戸坂潤、坂口安吾、三木清、五十嵐力、佐藤春夫…ここ20年程の大学入試問題で出題された作家の中から、目につくままに「没後五十年」を経て、著作権の切れた作家の名をあげてみた。(基本的に評論文を中心に選び、小説はここに入れていない。)錚々たる顔ぶれが揃っている。まさに日本の近代の知を代表する人々ではないか。下手な現代作家の文章を使用して著作権云々でもめるよりも、... [続きを読む]

受信: 2006年1月24日 (火) 01:45

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