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2005年12月28日 (水)

今年は「プログラミング軽視の影響」元年…か?

11月1日に、東京証券取引所のシステムが誤動作を起こして止まりました。12月8日には、みずほ証券の誤発注問題が起こりました。この二つの事件、偶然か必然かはわかりませんが、同じ東京証券取引所で起こった事件であり、同じコンピュータサービス会社で起こった事件でもあります。

その原因については、いろいろなところでいろいろな意見があります。僕自身もいろいろ思うところがあるのですが、やはり、プログラム作成という行程全体を軽視してきた関連企業の幹部に大きな責任があるのだろうと考えています。最近はCIO(最高情報責任者)という言葉もあります。CIOがしっかりと予算を使ってシステムマネジメントを行なう必要があることはいうまでもないでしょう。

ところで昨日、僕から見ると同じところに根がある事件が起きました。男子フィギュアスケートの採点問題です。

ニュースや新聞記事などを見ると、以下の状況だそうです。まず、「3回転ジャンプは2種類まで2回行うことができる」という採点ルールがある。最終的に2位になった選手(結果としてオリンピック代表になれなかった)は「3回転ジャンプ3種類を2回行った」のだが、それがそのまま加点され、コンピュータのチェックを潜り抜け、「こういうことはあり得ないと思っていた」審判をすり抜け、試合成績として発表されてしまった。

記事などによれば、日本連盟が使用している採点システムには、国際的な採点ルールの一部が実現されていなかったので、人間が誤った採点結果を入力しても、その通りに計算してしまった。「こういうことはあり得ないと思っていたので、システムに組み込んでいなかった」という発言があったが、一方、国際スケート連盟が使用する採点システムはこの採点ルールが繰り込まれているものの『高価』であったとのこと。

フィギュアスケートのルールがどれほど複雑かを知らないので何ともいえないのですが、スポーツ競技に参加している人は、まず頭を使って仕事をしている人を尊敬して、それから高くても「正しいプログラム・システム」を買いなさい。日本では「体育会系」という言葉が「知性よりも気迫・交渉術」と取られている。それは、実はお互いに損なのですよ。

ということで、またまとまりがなくなったけど、この数ヶ月の事件は、今年が、「社会が、プログラムやシステムのことを軽視し続けてきたことの問題が現実になった元年」だということを示しているのかも知れません。ボーイングやエアバス、あるいはJR新幹線などのシステムは、まず安全ありきの元に、多くのコストを使ってでも、ほぼ完璧に作られています。しかし、証券取引所のシステムや、国際スポーツ大会の採点システムになると、そのような完璧さが追い付いていないのかも知れません。例えば、近いうちに、ネットワークを使った行政申告とかも行なわれるようになるでしょうが、くれぐれも、クライアントサイドで計算させるようなモデルにはして欲しくないです。クライアント側の処理系に計算バグがあったりしたら、それだけで大変なことになります。他にも、家電製品、特に熱を出す製品の制御システムも恐いです。


【追記】2005/12/28

その後、新しいニュースが入りました。国際スケート連盟(ISU)が使っているソフトウェアも、そのような加点を防ぐ機能がついていなかったとのこと。そして、それをチェックするために必要な係員が配置されているということ。

驚くべき事実です。そういうルールはISUならソフトウェアに組み込んでおくべきです。パターン認識のような複雑な情報処理ではないのだから、組み込めないはずがない。

また、「ソフトウェア使用の前提である係員の配置ミス」というのは、なんだかなーという気がします。

毎日新聞2005年12月28日3時30分更新の記事によれば「小野部長の最初の説明を聞いたプログラム会社側は、納得できないとの意向を伝えていた」とのことですが、このblogで僕が書いているように、危機管理(この場合は、それをミスすることで被る損害と被害防止にかける費用の問題)を評価し直すべきだったのでしょう。

「オープンソースで開発すれば、こういうことが無くなる」とはいいませんが、スポーツ好きなファンがチェックしてくれる可能性が高くなり、ミスの発見が早くなると思いますね。

当座の結論は「使う前に十分動作テストせよ。」です。でも、根本の原因は、コンピュータソフトウェアがどのようにできているかを知らない人が管理をしてはいけないということでもあります。料理などに例えるとわかり易いでしょうか。料理方法を知らないでレストランの経営をしよう、というほどひどい話です。

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コメント

ISUのシステムは日本語表示ができず,しかもスクラッチから開発するより高価なため,独自開発したようですが,こういう採点システムはアルゴリズムが外から見えるようにオープンソースにしていれば日本語化も容易だったのではないかと思います。

投稿: okumura | 2005年12月25日 (日) 18:13

okumuraさま、どうもコメントありがとうございます。

「高価」って、どれくらいするのかなーとか、ちょっと考えてしまいそうです。どれくらいルールが複雑なのかは知りませんが、JavaScriptでチョコチョコっと書ける程度を越えているんですかねぇ。(やや厭味)というか、スポーツ競技業界と情報処理業界をマトモにコーディネートしている企業・人って、いるのでしょうか?

投稿: たつみ | 2005年12月25日 (日) 18:22

今の職場にはスケート業界に関係する人が結構います。

ジャッジシステムがいくらかっていうと、最低で2300ユーロ、30万円ぐらい、最高で約2万ユーロ、280万円ぐらいですね。後のことを考えると高くないと思います。
http://www.isujudgingsystem.com/
http://www.isujudgingsystem.com/englisch/download/Eiskunstlaufen_Level3_eng.pdf

スポーツと情報関係をうまくくっつけているところって、IBMぐらいでしょう。昨日の駅伝はIBMがうまくやってましたから。

投稿: だきわ | 2005年12月26日 (月) 16:04

開発はドイツの会社ですな。
http://www.wige-data.de/
うまいことくっつけるといいなあ、と思うのですが。

投稿: だきわ | 2005年12月26日 (月) 16:07

だきわさん、
それは、ひょっとして、ものすごく安いんじゃないでしょうか。
それをケチっていて、今回のようなことになったってことですか。orz

投稿: たつみ | 2005年12月26日 (月) 22:31

確かに安いと思います。日本製のは、たぶんこれ。

http://www.figure-extreme.jp/html/license.html
で、
ライセンス料 (税込金額)
初回購入時
基本ライセンス @52,500、 追加ライセンス @26,250
ライセンス更新時(毎年)
基本ライセンス @15,750、 追加ライセンス @7,875
となってますね。初期投資16万ぐらい+年5万かな。
あんまり安くないですね。日本語化したほうが安いかもしれません。

投稿: だきわ | 2005年12月26日 (月) 23:19

どうも会場ごとにライセンスが必要みたいですね。うーむ、そりゃ金がいるわ。

投稿: だきわ | 2005年12月27日 (火) 08:46

なるほど。それなら、そのお金を払えばいいんですよ。それがプログラム作成に対する報酬向上につながり、プログラマという職種そのものの社会的地位の向上につながると思いますよ。

投稿: たつみ | 2005年12月27日 (火) 09:19

当然支払うべきものですね。そういうプログラムに対する支払いをしないと、潰されるプログラマが多くなってしまいます。
#入場料やスポンサー収入でまかなえるかどうかは疑問ですが。

投稿: だきわ | 2005年12月27日 (火) 12:32

奥村先生のとこでみましたが、やっぱり人為的なものだったようですね。
http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/feature/figure/news/20051228k0000m050125000c.html
見えないものは誤魔化してもいいんだ、と思っている人が多いんだってことかな。
#これは教材に使えそうです。うちの場合特に。

投稿: だきわ | 2005年12月28日 (水) 15:20

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