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2006年1月 5日 (木)

ITの活用(階段関数で価格を決めることからの脱却)の続編

okumuraさんからのコメントを頂いて、ちょっと解説です。実は問題はそんなに簡単ではないのです。

「100円でも節約したい」のは確かですが、1分遅く出発すれば1分のアイドリング燃料費が余計にかかり、さらに1分遅く着くのです。1分を取り返すために少し早く走れば燃料費が余計にかかります。

例えば、25トン車が23:00に高速道路の大阪の入口にいて、これから東京に向かうとします。正規料金と割引料金の差額は4,750円です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060105-00000011-maip-soci

ここで何分待つことができるでしょうか?しかも、その待ち時間をアイドリングで待てば、結構な燃料費になり、到着が遅れます。それを避けるには、アクセルをたくさん踏んで遅れを短くするしかないですね。

さて、もし、21:00に高速の入口に着いた場合は3時間待ちで、3時間アイドリングかラーメン店で待機して3時間遅れです。これは嫌ですから、4,750円安くなっても、きっと待たないで入るでしょう。

もし、23:30に高速の入口に着いた場合は30分待ちで、30分間アイドリング、30分遅れ。これなら4,750円安くなるので待とうという気になります。

もし、23:00に高速の入口に着いた場合は60分待ちですね。どうしましょうか?また、23:30に高速入口に着いても目的地が名古屋(差額が安い)だったり、正規料金が安い2トン車だったらどうするでしょうか?

ということは、現状の仕組みでは、入口に滞留するかどうかは、車の大きさと目的地による正規料金の30%(値引き価格)と、滞留することで増えるコストを比較して決めているわけで、「待とう」という判断をした車は24:00になったら一斉に入口から入っていくわけです。

そこで提案です。価格を時間の階段関数にするのはやめて、「待てば安くなるけど、待つのは馬鹿らしい」と思う程度の割引曲線を設定すればいいのです。

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コメント

どうでしょうか?おそらく一番多いパターンは「0時ジャストにスタートしたいので早めにゲート前に着く」ドライバーかと思います。
つまり、早く着いたから待つんではなく、はじめから「0時狙い」なので、段階的に割り引いても最大割引開始前に到着するトラックが多そうです。しかも100台とかの待ち行列となると「ポールポジション争い」も起こってそうですから、ゲートを0時過ぎにより早く通過できるために早めに駐車場入りという状態かもしれません。早く帰れば翌日楽ですから。
もちろん、短距離運送の場合は数分を待たないので、かなりの解消になるとは思います。

投稿: 通りすがり | 2006年1月 6日 (金) 11:10

どうも解説ありがとうございます。一つ前のところにも書いていただきましたが私は車音痴のため夜のほうが走りやすいとかアイドリングとか知らないことばかりです。ETCなら正弦曲線でも何でもインプリメントは簡単でしょうからやってみたらおもしろいですね。他国にも例がないのでしょうか。

投稿: okumura | 2006年1月 6日 (金) 12:44

●通りすがりさん、

現状では「0時ジャストにスタートしたいので早めにゲート前に着く」ドライバーが一番多いのは、記事の通りです。それのせいで滞留が発生するのですから「皆が同じ時刻にスタートしたいと思えない」ような状況をつくり出せばいいのです。それには、割引曲線をいじって、最大割引まで待つのが有利な運転手(車の大きさ、目的地までの距離、積荷の重さ、時間拘束、本人の疲労状況で変わる) をもっと減らすことだって可能です。

ちなみに、入口付近で滞留が起こるとはいっても封鎖ではないので、今の制度でも「直後に30%引きになることを知っていても、23:59にゲートから入る」ことは可能です。また、ETCと無関係な車も23:59でも平気で入れます。

●okumuraさん、

滞留時にアイドリングをするのは、実は排ガスの放出などで環境に悪いので、各自治体で禁止されています。しかし、現状では多くのトラックがアイドリングを止めません。エンジンを止めると冷暖房が止まるからです。で、そういうのが実は嫌いという運転手さんもいて、そういう人はラーメン屋で待機していたりします。

正弦曲線を利用するのも一つの案です。(昨日はそこまで露骨に書きませんでしたが…) 例えば最大割引が午前4:00になるように設定すれば、いくら長距離トラックは値引きが大きいとはいっても、午前4:00に大阪を出て、朝6:00に東京に着くことはできないわけで、どこかであきらめて出発してもらうことになります。

他にも、適当な正規分布みたいな曲線(午前4時頃をピークにする)をつくって、「入った時間と出た時間ではさまれた面積(積分)で割引率(あるいは割引額)を決める」という計算方法だってありますよね。また、法定速度に近い速度で走ると割引最大になるというのも考えられる。なるべく早く入って、遅く出ると割引率が高いが、それでは仕事にならない。

ただし、こうすると「眠い/つかれたのでSA/PAで休憩する」という行為がしにくくなるなぁ。

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ところで、Suicaなどを利用した場合に限っての端数割引も、誰かの感想を聞きたい気分です。いまだと、東小金井→新宿、高田馬場は共に290円なのですが、新宿までは275円、新大久保までは281円、高田馬場までは290円とかなると、Suicaが爆発的に普及して、量産コストがさらに出てくると思うんですけどねぇ。

スーパーの閉店前の割引でも面白い話はいくらでも出てきそうです。

投稿: たつみ | 2006年1月 6日 (金) 13:17

もう一つ面白い話があります。首都高速は、現在は「端っこ少しだけを走るような特別な場合(e.g. 幡ケ谷→高井戸)を除いて一律料金」なのですが、ETC使用車に限って、入口と出口の距離で通行料金を段階的に割り引く制度を検討中だそうです。どうせやるなら「段階的に割り引く」のではなく、入口と出口のユークリッド距離を使って1円単位で通行料金を決めて欲しいですよね。

なお、このニュースをテレビで取り上げていた時に、某評論家が「実際に走った距離にしないと、グルグル回る暴走族が得をする」と批判しました。でも、この批判は筋違いと思います。グルグル回る暴走族は別の方法で規制すればいい。暴走対策を優先することで通常の利用者が得られない利益の方が大きいと思います。

投稿: たつみ | 2006年1月 6日 (金) 13:32

細かいことですがしかし重要なツッコミです。毎日新聞記事で取り上げられているトラック滞留は「入口前の一般道路上」ではなく「出口前の高速道路本線上」です。だからなおさら危険なのです。深夜割引の制度は『「enter~exit」と「0時~4時」の共通部分が空でない』ことが割引適用の必要十分条件ですから、23時や21時に大阪にいて東京に向かう場合は迷う余地はありません。16時に大阪を出て23時に東京付近に到達したトラックが問題なのです。

投稿: boiseweb | 2006年1月 7日 (土) 13:11

端数割引とは趣旨が違いますが、関西私鉄で始まっているPiTaPaというサービスでは、すでにIT活用が行われています。PiTaPaの運賃決済はクレジットカードによる後払いで、利用実績を集計して「回数券・定期券を買っておけば安くなった」という状況が生じていれば、『事後的に』回数券・定期券の運賃を適用する、というものです。

投稿: boiseweb | 2006年1月 7日 (土) 13:28

boisewebさん、こんにちは。実はお知り合いですね :-)

ご指摘ありがとうございます。うっかりしていました。「出口前の高速道路本線上」ですか。とすると、また違う運賃体系を提案すべきかなって思いました。boisewebさんのblogにもありますが、ETCが使えるんだから、10円ずつとか100円ずつの運賃体系なんて無意味だし、時間ごとの割引も、もっと細かく設定すればいいんですよねぇ。で、カーナビにもそれを計算する機能がついて普及すれば、もっとおもしろいというか全体としての効率がよい制御ができそうですね。

それから PiTaPa の話、もちろん知っています。JAL CARD Suica v.s. ANA CARD PiTaPa という話もあるそうで、おもしろいなぁって思っています。そういえば PiTaPa の場合、事後割引の区間は、事前に申請しておく必要があるんですよね。

投稿: たつみ | 2006年1月 7日 (土) 14:53

おぉ、カーナビとの連携は思いつきませんでした! 私のブログで指摘した「利用者が課金額を予想するのが困難」という問題の解決策になりますね。

私は、トラック滞留の問題の根底には「日本人一般の経済的合理性に対するセンスの欠如」があると思っています。その意味で、もしかしたら、合理的な料金制度を提案することによって問題を解決するというアプローチは、現実には困難かもしれません。

投稿: boiseweb | 2006年1月 7日 (土) 20:49

PiTaPaの事後割引について。阪急・京阪の「区間指定割引」はおっしゃる通り事前の区間申告が必要ですが、それはどうやら「定期券の代替」を意図しているようです。というのは、SuicaやICOCAには定期券タイプがありますが、PiTaPaにはそれがないからです。2月1日からPiTaPaに参入する大阪市交通局は、区間指定割引の制度を設けないかわりに、多頻度利用者の割引率がほぼ定期券相当になるように利用額割引の割引率を調節しています。

投稿: boiseweb | 2006年1月 8日 (日) 23:31

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