センター試験リスニングの「トラブルによる『再試験』」の裏側
新課程履修者にとって初めてとなるセンター試験が、先日行なわれた。リスニングについていろいろ報道がなされていて、事情を知らない人達がblogにいろいろ書いているのを見ていて、いたたまれなくなったので、ここに記そうと思う。
「試験中に音が聞こえなくなって挙手をしたのに試験監督から続行を命じられた」という受験生は気の毒である。本当にきちんと手を挙げても気が付いてもらえなかったのなら別の問題(試験監督が寝ていた or 手の挙げ高が足りない)だが、「試験続行」を言われたということは試験監督は事態を認知しているわけで、そうなると本当に可哀想だ。当該会場の試験監督は、入学試験への真剣さが足りないと思う。
一方で、不正確(あるいは意図的?)な報道が多いことは気になる。例えば「センター試験トラブル。450人が再試験」という見出しがあった。
「再試験」というのは1週間後に行なわれるものであり、当日行なわれるのは「再テスト」と呼べと、当日の試験監督を担当することになった人は研修(?)を受けている。少なくとも東京農工大学では2回も説明会があり、両方に出席を求められていて、そこでちゃんと説明があったと聞いている。もしかすると大学入試センターがきちんと説明をしなかったのかもしれないが、少なくともセンターの関係者は「再試験」とは一度も口走っていないはずである。報道が勝手に「再テスト」を「再試験」と言い替えたのだろう。
また、「トラブル」という言葉を使ってあたかも「失態」を指摘しているように見えるが、今回の「再テスト」は人数の多少は違えど予想されていたものであり、再テストマニュアルもあらかじめ配布されていたのである。けっして、行き当たりバッタリのぶっつけ本番で再テストをその場で用意したのではなく、十分準備されたものである。
ところで、事前に非公式には「1万台に対して1台程度の不具合予想」という話があったそうで、それが事実なら日本中で49台の不具合機器が出たはずである。もし仮に49台の不具合しかなかったとしても、試験マニュアルによれば、不具合があった受験生が大きな音を立ててしまったりすると、周りの受験生、場合によっては教室全体が再テストになる。したがって、450人程度が再試験を受けたことも、450台の不良機器があったことを意味しない。
それから「再テストを受けることができる受験生のなかに、本当は聞こえたのに聞こえなかったという人がいるかも知れず、それは不公平だ」という意見の報道があったが、それは間違いである。再テストの場合は、聞こえなくなったところから先の解答が有効とされる。例えば、2006年1月21日の18:13頃に、本当は聞こえたのに聞こえなかったと手を挙げた受験生がいたとする。リスニングなので、どこで聞こえなくなったのかが分からないが、実は、試験監督のうちタイムキーパーを担当している人がいて、挙手した人が出た瞬間に、その時刻(秒まで)とおおよその問題位置をメモしている。例えば「18:13なら第2問の問11を答えているはず」ということが分かっていれば、本テストの答案は第2問の問10までが有効で、再テストの答案は第2問の問11以降のみが有効になる。嘘をついた受験生は問11だけ得をすることは間違いないが、そのために60分以上帰宅が遅れてしまうのである。どちらかというと損をするはずである。
大学入試センターも、もうすこし正確な報道ができるように資料準備を行なっておくべきであっただろう。事前の不良機器台数の予想、再テストと再試験と追試験の違い、再テストの準備をちゃんとしていたことなどなど。説明責任も責任のうちと思う。
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