「リンクに許諾は必要かの議論」についての議論
マナーやエチケットというのは、技術やインフラの変化で変わるものです。
WWWが登場してすぐの頃(1992年頃)は、インターネットは研究者のためのネットワークでしたから、リンクを作ることに許諾なんて不要でした。メールアドレスやホスト名の一覧などが公然と配布されていました。nslookup して ls してなんて平気でした。finger も堂々と使われていましたね。Unix では ~ は chmod 755 が常識でした。
1994年頃から商業利用が本格的に始まって、1995年頃になると「URLは電話番号と同じ」という認識から、リンクを作るには許可が必要という認識が広がり始めました。
1998年頃には BASIC 認証の手法が普及し始めたので、今度は「リンクして欲しくないページは自分でパスワード認証で守るべき。だからこそ、パスワード認証がついていないページに勝手にリンクしても構わないよ」というようになりました。それでも「隠しURL」があって、どのページからもリンクされていないところに著作物を置いたりしている人がいました。
2002年頃になると、個人情報漏洩が社会問題になってきて、結果として勝手にリンクを嫌う風潮がでてきました。
2004年頃になるとblogブームが始まって、またまた「個人情報書き込み自由」な風潮が出てきました。また、URL推定の技術も向上してきて、検索ロボットが勝手にURLを見つけてしまうとか、あるいは、ネット上にURLを収集する強制プロキシ(メールの内容を見ることもある)に盗まれるということも起こるようになりました。最近は SNS(mixiなど)なら何でも書いていいと勘違いして個人情報も著作物も掲示しているコマッタチャンがでてくるようになりました。
現在は、どうなのでしょうか?
守りたいものは、まず、技術的に守る。それでも、他人が勝手に自分のプライバシーを書いてしまうことがある。それを止めるのは、技術ではなく人の信頼関係なんだろうと思います。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
1990年代の日本にこういう議論が起こったのは電話番号と同じ意味でURLを公開されては困るということからではなく,リンクの仕組みが分からなかった人が全文引用と混同して著作権侵害だと言い出し,そうではないことがわかった後もいろいろな人がリンクは(URLが公開されていても)何らかの権利関係が存在するという理屈を捻出しようとしたからです。たとえば高木さんの
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20040812.html
垣間見える文部科学省関係者の著作権意識程度
を読んでいただければこういう人たちの議論のレベルがわかると思います。
投稿: okumura | 2006年5月24日 (水) 09:58
奥村さん、コメントありがとうございました。
高木さんのblogで言及されている「校内ネットワーク活用ガイドブック」ですが、2003年から配布されていまして、それより前の時代をひきずっていないものだと認識しています。(実際、あの本はJAPETが委託事業で作っていて、さらにgoogleなどで調べると、JAPETが何名かの大学教員や初等中等教育の教員に依頼して原稿を集めたようです。)
ということで、あの本に出ている「リンク許可を書面で求めろ」が「1990年代の日本にこういう議論が起こった原因ではない」と私は分析しています。1995年の Japan WWW conference (IAJ主催、日本でおそらく最初のWWWに関する大きな会議)で、情報倫理について話をしたのは実は僕一人だけなのですが、その2カ月前に投稿論文を書きながら「リンクは、電話番号と同じであるから秘匿すべきという意見もある」と書きました。実際にそういう意見がありました。
おそらく、ですが、この話は「技術」「常識」「文化」「人々が他人を信頼するか(平和か?犯罪多発か?)」というような要素で結論がフラフラと動いてきたように思います。交通信号の「緑・黄・赤」とか、日本は車は左側通行で歩行者はさらにその端を歩く…とか、何年かの時間が必要だったと思います。リンク許諾の必要・不要については、「10年もすればどちらかに落ち着くだろう」と10年前に話をしていましたが、いまだに落ち着かないのは、やっぱり技術の熟成と一般利用者への普及が進んでないからなんですね。
投稿: たつみ | 2006年5月24日 (水) 10:57
私も同じころあちこちでしゃべりましたが,「リンクするとデータが取り込まれてしまうと思いますが問題ないのですか」といった質問をうけましたので,たぶんそういうレベルの人が考えたことだと思います。電話番号と同じようにURLを秘匿したいことがあるのは当然のことで,それがREFERER漏れなどによって検索エンジンに収集されてしまったということがよく起こりましたが,それと「URLは公開しますがリンクは許可を得てください」というのは別次元の話だと思います。
投稿: okumura | 2006年5月24日 (水) 17:14
http://www.nikkeibp.co.jp/jp/tools/rss2006.html
に
「配信されたRSSは、個人的な範囲でのご利用にとどめていただくようお願いいたします。営利、非営利目的を問わず、nikkeibp.jpが配信するRSSを利用したヘッドラインの再配布、メールマガジンの作成、サイトの構築などは固くお断りいたします。」
って書いてあるんですが,例えば,自分が関係している同好会のwebページにこれを引っ付けると,著作権の侵害になるのですか?
投稿: Jonny北千里 | 2006年5月28日 (日) 23:42
Jonny北千里さん、こんにちは。
たぶんですが、RSSを利用された側は、著作権の侵害だといって削除を求めるでしょうね。出、著作権法は親告罪なので、被害を受けたと思った方が訴えないと裁判にならず、裁判になれば裁判官が、RSSの著作性について判断をすると思います。どなたかが人柱になってくだされば、どうなるかわかるんですけどね。みんなやりたくないですよね。きっと。
投稿: たつみ | 2006年5月29日 (月) 10:17