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2006年11月30日 (木)

「情報処理学会からの提言」への反応

未履修問題に対する情報処理学会からの提言について、あちこちからいろいろな反応が聞こえてきています。 私に口頭で述べて下さる方、メールで下さる方、私や奥村先生のblogにcommentやtrackbackを入れる方、 学会の公式ルートで御意見を下さる方だけでなく、そのようなことはせずに、御自身のblogなどで御意見を表明されるかたもおられます。 提言の題名をgoogleなどにそのまま入力してみると、そのようなblogを発見できます。

そのなかでも

ビジネスのための雑学知ったかぶり
どうして「情報」が高校の必修課目?
をみて、少し考え込んでしまいました。

このblogを書かれた方は、他のエントリーを見る限りは情報教育の専門家ではなく、報道の専門家のようです。 全体として批判口調ではありますが、合理的に書かれている文章だと拝読しました(題名で「必修」と「必履修」を間違えている点はスルーすれば)。

この方の御意見にちゃんと(感情的にならずに)反論できるに十分な事実の積み上げを行なうことが、次の我々の仕事なのかも知れません。

とりあえずいくつか指摘してみます。

  1. 冒頭に、
    高校で「自動車産業を守るために、ギヤボックスの構造くらい教えるべきだ」とか「為替業務も習わないから日本の銀行はダメなんだ」という話は聞いたことがありません。
    とあります。その答を考えました。 一般の人は、自動車を製造したり修理したりする必要はないが、文書を製造したり、修正したりする必要がある。 一般の企業で事務職についている人は、大量の文書を製造したり、大量に修正したりする必要がある。 一般の企業で事務職について勝ち残ろうという人や管理職になる人は、とても膨大な量の文書を製造したり、膨大に修正したりする必要がある。 ということです。
  2. その直後に、
    なぜソフトウェア産業は特別なのでしょうか。
    と書いてありますが、現在の高等学校の教科「情報」はソフトウェアを作ることを教育目標としているのではありません。

    情報処理学会・初等中等情報教育委員会の試作教科書は、 「国民全員がソフトウェアの製作方法を体験したことがある(例えば高校3年間の総履修時間合計3,000時間のうち8時間位)」ということを目指していますが、 「国民全員がソフトウェアを作る仕事を目指して授業を受けて欲しい」とは書いてません。 うまい例えになっているかどうかわかりませんが、 「何を食べるかを決める人は、一回くらいは料理の体験をして欲しい」というのに近いです。

  3. たとえば、
    「情報化社会の光と影」「情報社会で守るべき約束ごと」というのは、どちらかというと政治経済、倫理の教科内容です。「コンピュータの基本的な構造と動作原理」は技術家庭か物理、数学の範疇です。
    をみると、「他教科でできることを『情報』で実施することに反対」をされているように読めます。 しかし、実は「他教科でできること」でないことを、僕は指摘します。 公民の教諭(政治経済や倫理)や理科(物理)や数学の教諭は、現状では「情報化社会の光と影」「情報社会で守ること」「コンピュータの基本的な構造と動作原理」を教えません。理由は簡単で、指導要領にそれが入ってないからです。 「指導要領遵守が大事だ」ということは、このblogの冒頭(コンプライアンス云々)に出ていますので、それで反論の根拠になります。 もし、「そんな指導要領はおかしい」ということを主張されたいのなら、 そのように書いて頂きたかったですね。
  4. 最後のちょっと前の方に

    インドや中国でのソフトウェア開発は今では広範囲に行われていますし、他の産業と同じように、今後は高付加価値の分野での競争は一層激化していくことは間違いありません。高品質、高機能のソフトウェア開発能力を持つことは日本という国にとって重要でしょう。

    しかし、企業レベルのソフトウェアの開発の競争力は個々のプログラマーのプログラミング能力より、品質管理プロセス、業務分析力、創造力などであり、およそ高校の「情報」の中で教えられるようなものではありません。

    とあります。 まさにそのとおりです。 そして、「企業レベルでのソフトウェア開発の競争力」を身に付ける場所である「大学における情報の教育と研究」の前提を落していっているのが、今回の「『情報』未履修」であるといえます。
  5. 最後に
    確実なことは、「情報」であろうと何であろうと、必修課目だということできっちり履修を実施すれば、他の課目の履修は影響を受けるだろうということです。そんな暇があれば、数学、物理、歴史など長年にわたってカリキュラムが練り上げられた課目に力を入れたほうが、きっとソフトウェア産業の競争力も高くなるでしょう。情報処理学会はいったい何をどう考えているでしょう。
    とあります。

    しかし、情報処理学会の提言範囲に「数学や物理や歴史」は含まれないというのが、会員全体の同意と思います。 もし情報処理学会が「日本のソフトウェア産業の競争力を高くするために、小学校から高校までの数学の時間を倍増する方がいい」のような提言を行なうとするならば、それは日本の教育システム全体に対して一つの学会が提言をせよということになります。御説ごもっともですが、情報処理学会は「情報処理」の学会であり、学校教育制度全体や、教員養成なども含めて提言できる立場にないと言えます。「情報処理学会はいったい何をどう考えているでしょう。 」の答になるかどうかはわかりませんが、情報処理学会ができる範囲(テリトリーという意味です)で可能な提言をしていると思います。

【補足】「数学や物理をちゃんとやって欲しい」という意見には、個人的には全面賛成で同意します。でもそれは、情報処理学会ではなく、日本学術会議などが提言を出して下さるようお願いしたいところです。

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2006年11月29日 (水)

OSSのLMS

昨日、早稲田大学OSS研究所が主催する「Japricoセミナー」という会合に参加してきました。Japricoというのは、この早稲田大学OSS研究所が主体となって開発しているOSS(オープンソースソフトウェア)のLMSです。OSS研究所の所長である深澤先生には、僕が修士課程の学生だった頃(1991〜)からいろいろお世話なっていたし、OSS研究所の研究員の梅沢さんには、僕が助手だった頃(1993〜)にお世話になりました。そういう意味で、懐かしい方々のお話を伺うことができました。

このセミナーで深澤先生が、ある新聞記事を引用しながら「日本の大学発のOSSなLMS」として次のものがあると話されていました。

最近、LMSは乱立状態といってもいい状態なのですが、今後どうなるのでしょうか? 個人的に思う「こういう機能が欲しい」をちょっとだけ書いておきます。

  • 普通の意味で安全。(ヘンテコなバグがないとか、XSS脆弱性がないとか。)
  • 普通の意味でカスタマイズ可能。(助教授なのか準教授なのかとか、校章を右に入れるか左に入れるかとか、その他いろいろ)
  • 適当に新しいソフトで構成できるように。(PHP4限定とかいわれると、ちょっと悩みます。)
  • 一つのシステムをインストールすれば、Apache の Virtual host の機能を利用して、多数のLMSが動いているように見える機能。
  • できれば FreeBSD とか、 Mac OS X Server とかの上でも動いて欲しい。
  • LDAPのサーバになれる機能があったらハッピー。そうしたら、Streaming サーバーからLMSのLDAPを引かせられるので、授業コンテンツの認証も(たぶん)うまくいきますよね。
  • クライアントについては、せめて Mac OS X で動く新しいブラウザの1つ以上で動作確認されている。(これができてないLMSが多い。)

機能的には Portal や SNS と似ているので、うまく統合できたらナイスです。だれか作って…。

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2006年11月28日 (火)

RELENG_4 EoL(31 January 2007)


正直、困ります。でも、仕方ないです。来年1月に、いろいろ作業しないとまずいですね。まずは5系にするとして、そのあと全部6に上げちゃおうかなぁ。

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2006年11月27日 (月)

ワープロソフトの教育って必要ですか?

昨日の OpenOffice.org に関する発表を聞いていて、考えたい(考えて欲しい)ことを述べます。

  • 【一太郎以外はワープロにあらず】という前提でのワープロ操作教育を、「情報リテラシー教育」と称して徹底していた人達は、いま、どうしているのか、想像したことはあるのか?
  • 教える方に【ワープロソフトのメニューの位置を覚えさせるのが情報リテラシー教育】という固定観念があるから、「ワードと違ってごめんね」とか弁解しながら OpenOffice.org を使わせるという授業になっていたのではないか?教員が弁解しながら授業をすると、学生はそれに気がついて評価も悪くなる。
  • もし、ワープロソフトの授業をする必要があるなら、何が大事なのかをよく検討して、自信を持って教えるべきでしょう。
  • 【MS Word 2003と OpenOffice.org Writerの差】よりも【MS Word 2003 と MS Word 2007の差】の方が大きいでしょう。Word 2007 が登場したら、2年生以上の在学生にも Word 2007 の講義をするのですか?
  • 構造的な文書とか、文書構造とか、文芸、修辞について教える過程で道具としてワープロソフトをつかえばいいのでは?
  • 学生(生徒)は、携帯電話の入力インターフェースで十分と思っているのに、なぜ、ワープロを教えるの?

ちなみに、携帯電話向けに配信されている「恋空」という小説があります。遂に紙に印刷されて出版され、ミリオンセラーになったそうですが、この小説、入力もすべて携帯電話なんだそうです。作者さんは携帯電話のキーボードが頻繁に壊れるので、毎年数台機種変更するそうです。

それから、僕は、ワープロソフトの使用方法を授業で教えません。(必要なら)最初はプレゼンソフトの使用方法をすこしやればいい。それを使いこなせたら、ワープロソフトなんてすぐに使えるようになるからです。


なんか、熱心にワープロについて語ってみたくなりました。

追伸(って、これblogなのに): PICTURE2って御存知ですか?


【追記1】どなたかが、2ちゃんねるでスレッドを立てて下さいました。

是非とも御覧下さい。

【追記2】この記事の続編を書きました。

続・ワープロソフトの教育って必要ですか?

是非とも御覧下さい。

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2006年11月26日 (日)

平成18年度情報教育研究集会

日本国内の大学教員で「大学生に対する情報教育」に関わっている人達の日々の実践や研究成果を発表する会議「情報教育研究集会(昨年までは「情報処理教育研究集会」という名称でした)」というのがあります。

毎年1回開催で、もう20年近く開催され続けています。今年の主催大学は広島大学。11月24日〜25日に開催されました。(なお、基本的には国立大学情報処理教育センター協議会が当番校(?)をまわしています。2003年までは「主催:文部科学省(あるいは文部省)」でした。)

圧倒されるのは分科会です。今年は9つの教室に分かれ、たった1日で200件以上の発表がありました。全国の多くの大学から、実践が発表されます。この集会に参加すると、現在の大学における情報教育の「ありのままま」を知ることができます。

昨日の発表で気になったことがいくつかあるのですが、そのうち一つをここに書きます。

ある大学で、予算の事情もあり、コンピュータ教室に OpenOffice.org を入れ、MS Office を撤廃した。学生がどのような意見を述べたかについての話でした。

事情は複雑ですが、論点を整理するとこんな感じでした。

  • 2005年度の大学1年生は高校で「情報」を学んでないので、OpenOffice.orgでも抵抗感が少なかったのに、2006年度の大学1年生からは「高校と違う」という苦情が増えた。
  • 大手電器店など販売されている初心者用お勧めパソコンには、たいてい、Word, Excel がプレインストールされているので、学生は自宅のパソコンで資料作成をしてしまい、大学の Writer, Calc を使ってくれない。この傾向は2006年度にさらに顕著になった。
  • 大手電器店などのパソコンには Powerpoint はインストールされていないので、学生は Powerpoint を買うか、 OpenOffice.org の Impress を使うかを選ぶことになる。そうすると、 Impress を使う人も結構いる。そして、2005年度より2006年度の方が「Impress が使いにくい」という人が増えた。高校で Powerpoint が普及しているからでは?
  • Drawは、対応する MS Office ソフトがないので、ちゃんと使われていて、2006年度の学生でも評価が悪くない。

僕の感想は、明日にでもアップします。


【追記 2006.11.27 11:34】ν速にスレが立ってたので、自分でトラックバックモドキをします。

リファラみれば一発だよなー

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2006年11月23日 (木)

本当に逃げ切る予定(つもり?)の新潟県教育委員会

僕の10月30日の投稿に、ktさんという方からコメントを頂きました。ありがとうございます。

僕は、10月30日の記事で「新潟県庁に足を向けて寝て下さい」と書きましたが、それどころでは済まないようです。

新潟日報の11月22日配信の記事によれば、新潟県教育委員会は、本当に「情報未履修」を「未履修と認識していない」として逃げ切るつもりのようです。

驚きです。

記事の内容が本当とするなら、この状態を新潟県教育委員会が放置するなら、大学は「成績証明書」の「情報」の欄が正しく記載されているかを調べるために、4月の授業開始前に全1年生にテストを実施するなどの対応を取らざるを得ないと思います。

もしそうなると、一時的に仕事が増えるのは大学側ですが、根本的に困るのは、新潟県教育委員会に容認された高校の方でしょう。BSE感染可能性ありの肉が見つかったところで緊急輸入停止をしたのは日本政府です。未履修の可能性がある生徒が見つかったところで、大学による可能性が疑われる学生の入学取消(あるいは保留)だって、不可能な手段ではないです。

そんなことにはなって欲しくない。それは、生徒、高校、大学のすべてに負担を増やすだけです。

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マカーでも Brandnew-J ?

月曜〜木曜の 22:00〜23:45 に J-WAVE で 金剛地 武志 が担当しているTOMORROW が、今晩に限り同時にインターネット中継されるそうです。

J-WAVEは、既に Brandnew-J というインターネットストリーミング配信を行なっていますが、これが DRM 対応のプレーヤーでないと聞けないということで、Windows XP 限定になっていました。「インターネットラジオ」というより「Windows ラジオ」という方が適切と、2ちゃんねるでも椰揄されていました。

しかし、今夜は限定で DRM を外すとのことです。ということは、たぶん、Macintosh でも聞けるということです。おそらく。

たぶん、そのためにかける曲の吟味(というか、ネット配信を嫌うミュージシャンの曲を外しておくこと)が大変だったんだろうと想像します。

別に 金剛地 武志 のファンでもなんでもないんですが、今夜22:00からしばらく聞いてみたいと思います。

でも、結局聞けないなんてことにはならないですよね…きっと。


で、なぜ、この話が「研究雑報」なのかというと、著作権、DRM、ネットストリーミングを考える一つの材料になりそうだからです。

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2006年11月22日 (水)

情報の免許がなくても、音楽教員なら大丈夫だと思っていた。

「情報」未履修について調査していたら、田中洋先生が、blogで無免許授業に関する記事を御紹介下さいました。

記事の内容を要約すると、「さいたま市の私立淑徳与野高校で音楽科の教諭が情報の授業をしていた。無免許授業になるので、授業やり直し」ということです。(詳しくは記事本文を御覧下さい。)

この記事のなかで驚いたのが次の部分です。

副校長は「情報の免許がなくても、音楽教員なら大丈夫だと思っていた。認識不足で生徒に迷惑をかけて申し訳ない」と話している。

この人は「教科」という枠組をどのようにとらえているのでしょうか?ひどい話です。でも、ここで「申し訳ない」と謝罪しているので、現状を改善し、問題ない状況にしてくれるのだろうと期待します。

さて、この記事で気になったのが次の3点です。

  1. 他にも、問題の認識すらできていない学校がたくさんあるような気がします。だれか、発見して下さい。
  2. そういえば、私立土佐高校の「情報A」は、300人弱の生徒を体育館に集めて、高知工科大学の教員による『授業』で未履修解消(アサヒコム2006年11月13日21時01分配信の記事)とのことですが、そこで授業をした高知工科大学の教員は、高等学校「情報」の教員免許を持っているのでしょうか?
  3. この学校の場合は既に手遅れですが、免許を持った情報科と音楽科の教諭が協力すれば、「音楽と情報」をうまく融合することは可能ですよね。

もっと、教科「情報」や、その教員養成などについて、議論を深めて欲しいですね。


【追記】(2006.11.22 21:46)

okumuraさんが教えて下さった、続報のリンクを置きます。 http://www.tokyo-np.co.jp/00/stm/20061122/lcl_____stm_____001.shtml

記事が正確なら、埼玉県の学事課は、ちゃんとしているようです。

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【速報】情報処理学会からの提言が、毎日新聞web版で記事掲載

安西先生の敬称が「慶應義塾大学学長」となっていますが、たぶん、慶應義塾塾長とするほうが正確なのかなーとか思いつつ、いずれにしても記事になりました。「情報」を未履修にしておきながら、未履修でないと開きなおっている教育委員会の皆様に、是非とも記事内容が届くことを祈ります。

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2006年11月20日 (月)

新しいビジネスが登場するかも

INTERNET Watch 2006/11/17 17:41配信の記事によれば、海賊版対策のために著作権法の改訂が検討されているとのことだそうです。

で、この記事で注目したいのは次の部分です。

また、著作権法における「親告罪」の見直しも検討する。親告罪とは、被害者が告訴をしなければ、公訴を提起することができない犯罪。過失傷害罪や名誉毀損、親族間の窃盗などがこれにあたり、海賊版販売行為も著作権法で親告罪とされている。
もし、著作権法違反の告訴を被害者以外からもできるようになると、著作権法違反を発見して権利者に通知するというビジネスが登場しそうです。場合によっては、「弊社の調査部門が、貴社が権利を保有する著作物を無断で利用しているサイトを発見しました。もし、弊社紹介の弁護士を御利用になるのでしたら、成功報酬 30% にて代理で告訴を致します。いかがでしょうか?」というメールが突然くるかもしれませんね。

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2006年11月19日 (日)

未履修問題を逆手にとった阪大

読売新聞web版 2006年11月17日配送の記事によれば、 大阪大学が世界史未履修だった高校生を相手に、高校の世界史の教科書を利用して授業を行なうそうです。 その中にこんなことが書いてありました。

文部科学省大学振興課は「今まで聞いたことがない。世界史は高校で学ぶのが原則なので推奨はしないが、大学側の現実的な対応として注目する」としている。
そういえば僕は今年の早稲田大学の「情報基礎演習」の授業の副題に「高校で『情報』不得意だった人のための」とつけて授業をしました。僕は「未履修だった人のための」とは書かなかったけど、実質は、僕の方が阪大よりも先にやってたのです。はい。

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2006年11月18日 (土)

102万5929名

102万5929名……これは、平成16年度の学校教員統計調査における、専修学校と各種学校以外の教員の合計人数です。

これを8で割ると 12万8千程度です。

もし、免許更新制が実施され、それが8年毎の更新なら、 毎年平均で12万人の教員が免許更新を受ける必要があります。

文部科学省のサイトにある 教員免許更新制の可能性という文書を見ると、とりあえず更新に当たって試験はないようですが、研修受講などが義務付けられているようです。

今でも教員研修が行なわれていますが、今後は、教員研修に重みがつきますので、研修担当者の奪い合い?になるかもしれませんね。

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2006年11月17日 (金)

情報リテラシーのない人が情報リテラシーについて質問すること

例えば、美味しい料理を作る人が必ずしも料理評論家として優れているとは言えません。優れた野球監督も、競技者としては駄目だったかもしれません。ついでに言うと、情報教育と教育の情報化は別物です。

ということはわかり切った上で、書きます。


僕自身が、情報リテラシーを教えているからといって情報リテラシーを身に付けた人であると言えません。ただ、情報教育の担当者は、自分の情報教育の内容を良い意味で情報化させているのかどうかは気になります。

今回の「未履修問題」についていろいろコメントをしながら、いろいろな人のblogなどを見ていて気になったのが、情報リテラシーを身に付けていない人の発言です。

  1. 「わからないことは調べる」という「情報活用の実践力(問題解決に関する態度)」の欠如
    • へぇ、高校で情報って必修だったのですか。よくわからないけど、僕の意見は……(ry
    • 高校で情報って何を教えているのですか?よくわからないけど、僕の意見は……(ry
    →今の高校で何をやっているかを知らないのに、調べようともせずに議論をしている。
  2. 「誤った情報を信じてはいけない」という「情報社会に参画する態度」の欠如。
    • 大事なことは情報の探し方です。高校で情報をいくら学んでも…(ry
    • 大事なことはメディアリテラシーであって…(ry
    • 情報処理学会からの提言は、専門家養成のプログラミング教育をやれなんだから…(ry
    →今、何をやっているかを知ろうともせずに自分で思い込んだ内容を元に議論
  3. そもそも関係のないことを、どさくさに紛れて主張する人
    • 情報の未履修も問題ですが、私は●●●をもっと勉強すべきだと思います。
    →「空気嫁」と言われる状況ですね。

そういえば、僕が入っているメーリングリストのなかでも、そのメーリングリストの主旨から大幅に外れていることを、長々と書き続けている人もいます。特に困るのが、割と巨大なメーリングリストに、その人と、その人が会ったことがある無関係な第三者の個人情報を書く人です。個人情報がダラダラと流れてくるのには閉口します。

他にも、今まで、その人のその手の内容のメールに誰も反応していないのに、それでも、メーリングリストの主旨に合わない『ありがたい御主張』を毎度毎度丁寧に書いている人もいます。

「情報」の担当教員の中にも、そういう人がいるような気がしています。必要なのは教員研修なのか、それとも違うことなのか、最近よくわからなくなりました。

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2006年11月16日 (木)

更新がインストールされています

昨日、某OSのセキュリティパッチを当てる作業をして、既知の脆弱性の穴を塞いでいたのですが、画面を見ていたら「更新がインストールされています」って出ていました。

日本語の自然な感覚では「更新をインストールしています。」と表示されるべきです。勝手に更新がインストールされているような文は、無責任感極まりないです。

電車に乗っているときも「ドアが閉まります」と車掌が言ってますが、ドアを閉めているのはあなたでしょと言い返したくなります。それと同じです。

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2006年11月15日 (水)

【提言】「高校教科「情報」未履修問題とわが国の将来に対する影響および対策」

情報処理学会から、 「高校教科「情報」未履修問題とわが国の将来に対する影響および対策」 という、今回話題になった「情報未履修」に関する提言が、 情報処理学会長(安西 祐一郎 慶應義塾 塾長)の名前で発表されました。

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2006年11月14日 (火)

「情報」の参考書?資料集?

日経BPソフトプレスから、高校の教科「情報」でも、 それ以外の場所でも使える本が出ます。 私は監修と、数項目の執筆をしました。

簡単には、 「情報の参考書」のような本だと思ってください。 高校の世界史とか日本史とか地理についてくる資料集の「情報」版というのが近いかも知れません。

書名は「これだけでわかる情報リテラシー」(仮題)です。 年末には書店に並ぶと思います。 大学や、専門学校、あるいは、ひょっとすると中学の授業でも使えると思います。

なお、高校向けは書店向けとは違う書名で、 既に日経BPソフトプレスから各高校にDMが送られているそうですので、 そちらを御利用下さい。

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「情報A」では総授業時数の2分の1以上を

アサヒコム2006年11月13日21時01分配信の記事で、私立土佐高校で「情報A」未履修の3年生296人を体育館に集めて補習授業を行なっている風景が報道されています。

ところで、文部科学省のwebサイトに出ている高等学校学習指導要領第10節「情報」を見ると、「第3款 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」に、

各科目の目標及び内容等に即してコンピュータや情報通信ネットワークなどを活用した実習を積極的に取り入れること。原則として,「情報A」では総授業時数の2分の1以上を,「情報B」及び「情報C」では総授業時数の3分の1以上を,実習に配当すること。
と書いてあります。どのようにして体育館で半分以上の時数を演習するか見物です。誰か、2ちゃんねるで実況してください。

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2006年11月11日 (土)

資格を持っていると給料はどうなるか?

今日、あるゼミで、ある大学院学生さん(といっても、僕より年上)が、こんな話をしていました。

IT関係企業に就職しようとすると、大抵の会社はX社のYかZという資格を持っていることを希望します。そのため、学生さんは皆さん、YやZをとることに大変興味があります。実際には素人の学生さんでも3週間パソコンに向かえばYをとれるので、ほとんどの学生はまずYをとって、さらにZをとる学生がいるという状況です。しかし、私が調べたところでは、YやZを持っている人の方が給料が低いのです。

それはなぜか。

YやZを持って就職している人は、就職するとすぐに文書作りとか表計算ソフトとかを使う仕事をさせられます。いっぽう、YもZも持っていない人で同じ企業に就職できた人は、大抵将来の幹部候補で、パソコンを使って文書を作る仕事は他人に頼む立場なんですね。

結論はこうだ。資格Yや資格Zを持っている方が給料が低くなる。


奥村先生のblogに問題として出されてしまったので、蛇足ヒント。資格Zは、ちょっと取りにくいが「Zも持ってます!」と採用面接で自慢すると、たぶん、X社製品のメンテナンス要員で、最も給料が低くなるでしょう。

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2006年11月10日 (金)

【速報】毎日新聞web版で「情報」の履修不足特集記事

毎日新聞web版で 「情報」の履修不足特集記事が掲載されています。

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「学校知」の反対概念は「商品説明知」

「世界史の未履修問題」をきっかけとして「情報の未履修問題」が発覚し、 blogなどでいろいろと議論を重ねてきたような、 全然議論なんてしてないような気がするのですが、 今回の事件を通して、改めて深く認識したことがありました。

小学校・中学校・高校・大学と進むに連れて、 成績をつけるときの評価観点は変化をします。 その変化についてこられない児童・生徒・学生は、 進学すると成績が悪くなったりします。 逆に大人びた児童・生徒・学生は、 進学するに連れて成績が良くなってくるのです。

しかし、ここでもう一つ面倒なことがあります。 例え未履修なく各段階における評価観点を満たして進学してきても、 社会に出た途端に使えない「先生がテストに丸をつけてくれるような知識」、 いわゆる「学校知」を身に付けているにすぎない場合が多いのです。

この問題は、 わたやんさんが指摘されたことでもあります。

情報教育で身に付けたい知識の中には、 学校で扱われる知識というより、社会に出て必要となる知識の方が多いように思います。 しかし、 情報教育で「先生が丸をつけてくれるような知識」ばかりを扱っていると、 進学、就職したときに困るように思います。

一方で、 ジョーシン06で、次のような発言が聞かれました。 「高校でワープロをさらに時間をかけて教えるが、 大学の先生は『ワープロでさえ全然使えない』と言う。 生徒らはもっとワープロを教わりたいのに、 何を教えればいいんだろうか?」

「学校知」を避けた実用的な授業にしようとするあまり行き過ぎてしまった、 言い替えると、 「学校知」の反対側にある「商品説明知」とも言うべき授業になってしまった 『情報』の授業の問題点のような気がします。 では、「学校知」と「商品説明知」の間にどんな知識があるのか、 それを研究する必要があるんだろうなと、最近反省しています。

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2006年11月 9日 (木)

【予告】高校教科「情報」未履修問題とわが国の将来に対する影響および対策

上記は、 11月3日に【「情報未履修」問題への情報処理学会からの提言】という題名で、 本blogで予告した文書の題名です。 情報処理学会の内部で、提言について検討が進んでいます。 そろそろ出せるとおもいます。

概要は、学校、教育委員会、大学のそれぞれへの2〜4個の要請です。 概要の後の本文で、 その理由を、文献などを参照しながら説明しています。


もし、僕のこのblogを御覧の先生で、 高等学校の教育(特に教科「情報」)に関して 学会活動などをされている先生がおられましたら、 貴学会でも、 今回の未履修問題について提言・コメントをお願いします。

北朝鮮の核開発のときは原子力学会がコメントを出している そうです。

今回の問題を、 「補習時間の決着」で喉元にしないように、 よろしくお願いします。


(2006.11.14 15:28追記) そろそろ発表の予定です。

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「中学での履修漏れ」が明らかにする問題の根源

読売新聞WEB版 11月7日配信の記事

によれば、中学校でも必修教科の履修不足があるとのことです。

必履修漏れを起こしている高等学校の先生や教育委員会のみなさま、先生方の高校に入学する生徒が中学校で必修教科の履修をせずに入学してくるとしたら、困りませんか?


そして、これは逆に大学→大学院or企業への進路でも同じ話です。大学関係者が単位不足の学生を偽装して卒業させたりすれば、企業にとって甚だ迷惑でしょう。今回の問題は高校の問題として封じ込めず、大学関係者も真剣に考えるべき問題です。

僕が、日本文教出版のICT・Educationの第27号に載せて頂いた論説へのアンカーを再掲します。

大学入試は何のために行なうのかってことを、大学関係者は考える必要があると思います。

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2006年11月 8日 (水)

「情報」履修になっていた気がする…(うまくやっていたら)

朝日新聞web版の「マイタウン滋賀」に、こんな記事が出ています。一部を引用します。(本来は「必履修」とすべきところが、記事では「必修」になっていますが、原文ママ掲載します。)

高校履修漏れ/膳所と彦根東でも(2006年10月28日)

高校卒業に必要な必修科目の履修漏れが全国で相次いで見つかっている問題で、県内でも、県立膳所高校(大津市)と県立彦根東高校(彦根市)が一部科目の授業をしていなかったことがわかった。県教委はこれまで各校からの報告をもとに「履修漏れはない」と発表していたが、26日夜に匿名の情報提供があり、詳しく調べて発覚した。いずれも時間割りや成績表の上では学習指導要領に沿っていたが、内容を変えて授業をしていた。

膳所高は、2単位70時間の履修が必要な「情報B」を、半分の36時間程度しか履修させていなかった。残りの時間では、「情報B」として評価すると生徒に伝えたうえ、インターネットを使って他教科の調べ学習をさせたり、リポートをつくらせたりしていた。2年生440人、3年生438人が単位取得のための措置が必要という。

(後略)

教科「情報」は、他教科との協調が求められている教科です。他教科の調べ学習の際に必要となる検索手法や情報の活用、そして著作権や個人情報の処理などを、材料としては他教科の内容を使いながら、「情報」の授業の中で展開可能といえます。ただし、「情報B」の看板は苦しいかな…。記事の内容が真実とすれば、「情報A」の看板を掲げて、「情報A」の教科書と、例えば「世界史」の教科書を並べて両方の教科書をちゃんと使いながら授業を進行させれば良かったんじゃないかと、つまり、未履修にならずにすんだんじゃないかと……。(過去のことなので、手遅れですが)

見解の相違はあるかもしれませんが、「情報A」の授業の中で修学旅行に関する下調べや、就職・進路に関する下調べを題材としている例は沢山あります。だったら、世界史について学ぶ、数学について学ぶ、物理について学ぶなどを題材として、教科「情報」らしい学習活動に繋げることは可能です。

そういえば‥、今年夏の情報処理学会の情報教育シンポジウムSSS2006の1日目のパネルディスカッションのテーマを、ここに再掲(?)しておきます。

パネルディスカッションI「高等学校の授業における情報機器の活用」
司会
柴田 功(神奈川県立総合教育センター)
パネリスト
(五十音順)
  • 國府方 久史(慶應義塾女子高等学校)
    普通教科「情報」における作品制作実習(プログラミング,表計算ソフトウェアのデータベース機能,情報の収集・整理・分析・発信などに関する作品制作について)
  • 佐藤 義弘(東京都立府中西高等学校)
    他教科とも連携した情報科の取り組み
  • 丹羽 時彦(関西学院高等部)
    グリッドコンピューティングを用いた問題解決能力の育成
  • 天良 和男(東京都立駒場高等学校)
    物理と教科「情報」におけるコンピュータ活用

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教育におけるICT利活用研究会

「教育におけるICT利活用研究会」という団体(まだ法人にはなってない)が設立されまして、まだ2回ですが既に研究発表会をしました。

委員長
山西 潤一(富山大学・人間発達科学部・学部長、日本教育工学協会長)
委員
小泉 力一(尚美学園大学・芸術情報学部・教授)
坂元 章(お茶の水女子大学・文教育学部・教授)
辰己 丈夫(東京農工大学・総合情報メディアセンター・助教授)
参加企業(文字コード順)
NTTコミュニケーションズ
ワコム
開隆堂
学校図書
教育出版
啓林館
光村図書
三省堂
新学社
大日本図書
帝国書院
東京書籍
内田洋行
富士通
文溪堂
事務局
ラティオインターナショナル
原 久太郎

主にデジタル教科書や、将来の教室環境などについて議論をしていますが、対象がK12全体です。 僕は教育実習(中学・高校の「数学」の免許を持ってます!)は高校ではなく中学を選んだくらいに中学校の教育については興味はあるんですが、今までは高校〜大学の教育に関する研究が中心でした。 小学校・中学校については「情報モラル教育」(日本の大学と、韓国のK12全体では「情報倫理教育」と呼びます。)と知的障害者教育についてのみ関わりがありました。 この研究会の中学校・小学校などに関する議論は新鮮で、本当の意味で勉強になります。

委員の先生方も、私が普段活動している情報処理学会とは直接関わっていない先生中心で、知的刺激を十分満足させてくれます。

今後も、いろいろ教えて頂きこうと思っています。また、情報技術(特にインターネット技術など)の援用や、情報モラル教育に関して、お手伝いができれば嬉しいと思っています。

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2006年11月 5日 (日)

『救済』とう名のゴマカシの尻拭いに大学はもっと怒るべき

世界史の未履修問題については、『救済』という名前のゴマカシで騒動を収めることになりましたが、収まったのは騒動だけです。350時間未履修の生徒が「70時間+レポート」で済んだからといって、履修すべきであった内容がその生徒の身に付くというわけではないのです。「病気に、痛み止め」と何ら変わらないということを、僕は指摘します。そして、その尻拭いの担当は大学教員に押しつけられるのです。

立花 隆氏の指摘は、「東京大学の事情」というエリート指向ではありますが、東京大学は「未履修が発覚した高校の進路指導の先生方が、生徒に進学させたい大学」なのですから、立花氏の指摘を「エリート以外に無関係な指摘」と受け流すことはできません。(ちなみに今年度に東京大学駒場の非常勤を担当した私(東京大学卒業ではありませんが…)も、立花氏に近い感覚をもっています。)

また、『世界史』については未履修状態の生徒に『ゴマカシ』をしてでも履修させようという動きがありますが、『情報』は違います。新潟県教育委員会は、実態は、どう考えても『情報』未履修なのに、「『未履修とは異なる』と認識している」と堂々と発言しています。したがって、『情報』の未履修部分については、『救済』という名のゴマカシすらされずに放置され、来年もこの状態が継続する可能性があります。

大学ももっと怒るべきだと思います。

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大学は高校の卒業証書を今後も信用し続けたい

詳しくは、情報処理学会からの提言に入れる予定ですが、今回の問題は、高校と大学の間の信用を著しく傷付ける行為に発展する可能性をもっていると思います。

大学が、すべての教科・科目を試験せずに、主要教科のみを試験としています。これは、主要教科以外の教科は高等学校が単位認定をすることで、その受験生が「科目を履修した結果、その成果が満足できると認められれば、単位の修得が認められる」とみなされるからです。

その単位認定が疑わしいということになれば、大学は高校の卒業証書を信用できないということになります。

もし、現状が改善されない状況が続けば、大変なことになります。

あり得る、あってはならないストーリーを書きます。

  1. 未履修を放置して開き直る高校・教育委員会がなくならない。
  2. 高校の卒業証明書に何の価値もないということが確定。
  3. 危機を感じた大学が、次のいずれかの対応をする。
    • 入試科目を大幅に増大させる
      →高校で本当に真剣にやらないと駄目になる
    • 高卒認定試験を受験(免除ではなく受験)して合格することを受験資格にする
      →高校で勉強しなくてもいいことになる
    • 高卒でなくても入学できるように学則改正する
      →高校に進学しなくていいいことになる
  4. いずれにしても、高等学校は苦しくなる。

ちなみに大学は、最近はアクレディテーションという作業が進行していて、また、文部科学省などから認証・評価という作業があります。アクレディテーションの対象学校になるとめちゃめちゃ大変で、「○○先生の授業で単位を取得した人のうち、最低点の答案を提出して下さい」という依頼もあるそうです。その大学が、どんな答案で単位認定をしているかの実態を調査しています。個人的には、そのような認定作業は不要だと思いますが、大学の信用を社会にアピールするためには必要悪なのだろうと理解しています。もし、ある大学がアクレディテーション受けたのに通過できなければ、その大学は社会的信用を逸します。

高校でも同じように「あなたの高校で単位認定をうけた人の最低点の答案を見せて下さい」と推薦先の大学や文部科学省から依頼があったら、高校の先生方は大変ですよね。本来なら不要な校務がさらに増大します。大学の教員も、そんなこと、本当は望んでいません。そんなことにならないようにするには、正直に履修をさせて、正直に単位認定をして欲しいなと思います。

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耐震強度が低い背骨付き未履修学生

今回の問題を議論していて、こんなことに気が付きました

  1. BSE問題のとき、アメリカ政府は「ちゃんと検査する」と約束しながら検査体制の不備で背骨付きの肉を輸出し、輸入停止という大問題になりました。あれは、輸入肉を日本で検査していたから発覚し、背骨付きのまま日本の市場に流れずに済んだのです。
  2. 一方、マンションの耐震設計偽装のときは、認証検査機関が耐震設計構造計算書の中身をちゃんと追計算しなければいけなかったのに、それをしなかった(あるいは、だまされた)結果、耐震強度を満たしていない建物がたくさん建築された。

さて、いまの大学入試と必修科目の未履修問題は、どちらかというとマンション耐震設計偽装に近い状況です。私たち大学教員は、特に今年から1年生の授業に困難を感じています。(例えば、立花隆氏も指摘しています。)現在の大学1年生で大量の未履修教科・科目を抱えてきた学生達は、「輸入ストップされた背骨付きの輸入肉」というよりは、「耐震強度が低いまま販売されてしまったマンション」と同じ状況です。

ただし、この比喩にも限界があります。耐震強度は、大規模災害のたびに厳しい方へと変わってきているし、BSE問題でも規制強化が続いています。指導要領の総時間は「ゆとり」の影響で小さくなってきています。名実共に「未履修は0」の生徒(大学に来ると学生と呼ばれる)でも、昔の基準では「未履修過ぎる状態」です。

これについては、次の記事で提案を書きます。

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2006年11月 3日 (金)

「情報未履修」問題への情報処理学会からの提言

現在、情報処理学会の情報教育委員会では、通称「提言2006秋」を準備しています。 内容を要約すると次の通りです。

  • 進学校と呼ばれている高校で「情報」の未履修が多数発覚した。
  • 大学は「情報」を履修済と仮定して情報教育の改革を行なった。
  • 大学の情報教育についていけない「情報」未履修の生徒が多数出現した。
  • 高校「情報科」の教員の地位向上、他教科との兼務廃止、研修の充実を望む。
  • 大学の教員養成課程の充実と入試への積極的な出題を望む。
  • 次期指導要領での「情報」の時間の増加を望む。
です。

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