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2006年12月15日 (金)

横浜清陵総合高校見学

昨日(2006年12月14日)横浜清陵総合高校を訪問しました。僕はあいにく次の予定(授業)があったので、見学の途中で中座をしたのですが、DTPの授業というのは、予想よりも新鮮でした。

●一般的な操作方法なんて存在しない

表現の工夫に努力するためには、最低でも1つのDTPソフトを使う必要があります。一般的な操作方法ではなく、そのソフトの操作方法を身に付ける必要があります。でも、その授業は、そのソフトの使い方を覚えるのではなく、表現の工夫に費やす時間でした。

もちろん、そのソフトを使いこなせるまでの時間が、今日までの何回もの授業で行なわれてきたことは承知していますが、それを通り越して初めて一般的なソフトの使用方法を身に付けることができるのだ、ということを改めて実感した時間でした。

現在の地球では、右はアクセル、左はクラッチ、真ん中はブレーキという位置を覚えないと、うまく車を走らせることができない(オートマの運転云々は別の話として…)わけです。自動車の機能を一般的に考えれば、アクセルが左、ブレーキが右、真ん中がクラッチでも何も問題はないはずですが、それにこだわることはできないんですよね…。

●3つ折りパンフレットの構造

A4判ヨコを縦に3つ折にして配布するパンフレットを制作する実習の成果を見せてもらいました。作った経験を持っている人しかわからない話ですが、あれは実はかなり大変です。

いま、デザインする6つの面を内側を左からA,B,C、外側を左からZ,Y,Xと呼ぶことにしましょう。なお、AとXが表裏の関係とします。

ABCを上に向けて何かを表現しても、実際には、BとCの間でCを持ち上げて谷折にしてしまうので、AとZが上に向くことになります。そして、AとZの間をAを持ち上げて谷折にすると、Xが上に向いて、これが表紙になります。裏表紙がYです。

この状態で積み上げてパンフレットとして手にとってもらえるようにします。

まず客はXを見て、興味を持ったら中を開きます。ということはXは、興味を持ってもらえるような内容になってないとまずいわけです。

興味を持った客が中を開くとAとZが現れます。ここで情報がある程度具体的に増えてないとパンフレットはここで終りです。

客がさらに開いてA,B,Cを見てくれたら、ほとんどの内容を見せることができます。このとき、BとCだけで美しく見せるのではなく、A-B-Cで美しいようになっている必要があります。この条件を満たしながら、AとZのみが見えているときでも不具合がないようにデザインしておきます。

ほとんどの客は、A-B-C を見たところで折り目に添って元の形を復元して、最後にひっくり返してYを見ます。

ということで、この X, A-Z, A-B-C, X, Y という情報提示の順番と形を美しく、しかもストーリーをもって見せるためには、元の情報を十分に整理しておく必要があります。これは明らかに「情報デザイン」が必要な作業です。(情報デザインというのは、情報提示の順番や見せ方の工夫のことです。「美術的なデザイン」と直接の関係はありません。)

………てなことをちゃんと体験的に勉強したであろう作品が、教室に並んでいました。

つかれたのでこの辺で。

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コメント

横浜清陵総合の五十嵐です
辰己先生が受け付けでお待ちの間もノートPCで作業をされている姿に驚きました。忙しい中、時間を割いていただきまして恐縮です。

ご指摘のように、ソフトの使い方を超えて、情報をどのように伝えるか、どうしたら読んでもらえるかという「情報デザイン」を教えています。「DTP入門」を履修すると「DTP活用」という科目でイラレとホトショを使い、さらに高度な表現が可能になります。年々レベルが高くなっていくので、教えるのも楽しみです。

三つ折りチラシの解説までいただき、ありがとうございます。(言葉で説明すると確かに疲れますね。)最後の総合課題にしています。ストーリー性があるので、ラフスケッチも実際に三つ折りにしたA4用紙を使っています。完成したときの達成感/充実感は、作ってみなければ分かりません。同感!

神奈川には大学の先生の訪問を歓迎する教員が多数おります。ぜひ、いろいろなタイプの授業をごらんください。また、2月頃でしたら大学生の引率もどうぞ。

投稿: VX | 2006年12月16日 (土) 00:02

せっかく興味深いものを色々見せていただいたのに、忙しくしていて書き込めないまま時間が経ってしまいました。私としては、一番印象的だったのは、五十嵐先生が自らデジハリなど多くの講座を受けられて勉強されていて、その成果を生徒さんたちの指導に活かされている、という点だったりします。そういう熱心な先生ばかりならこの教科も何も心配ないのになあとか…

投稿: 久野 | 2006年12月18日 (月) 22:32

もうちょっと書いてみようかな。プレゼンテーションの題材なんですけど、生徒が社会見学に行った内容を題材とさせていましたよね。それってとてもいいと思うのです。多くの学校では「ネットで調べ学習」させてそれをプレゼンさせたりしますが、それだとなんかネットから持って来たものをパクって切り貼りする練習してるだけじゃないですか。自分が目と耳と足で手に入れた情報を、どうやったら聞き手に伝わるか苦労する、という体験はとっても重要だと思うのですよね。

投稿: 久野 | 2006年12月20日 (水) 09:22

久野先生、おほめをいただきありがとうございます。

本校では「事業所見学」と呼んでいます。毎年1年次生が、「産業社会と人間」という科目の一環で、1日をかけ、20カ所以上に分かれて事業所の見学、または、日揮株式会社でのジョブシャドウを行います。(高校でのジョブシャドウは日本初の実績です)

これを、「体験」で終わらせるのか、掘り下げて「経験」まで引き上げるのかで、手間をかけた行事の価値が変わります。各自がプレゼンとして取り組む中で、振り返り、調べ、伝えたいことを精選することで「経験」に昇華させることができます。また、互いのプレゼンを聞くことで、異なった事業所における「経験」を共有することができるのです。

科目「産業社会と人間」では、学年を4分割して、見学したた事業所ごとのグループ発表を行いますが、これでは集団に埋もれてしまう生徒が出ます。情報の授業では、同時期に一人一人の発表をクラス内で行います。この科目を横断したコラボレーションが総合学科の基盤を作っているのです。

このプレゼンのスケジューリングは私のブログの「プレゼンの振り返り」でごらんください。とにかく発表会が多い学校ですので、プレゼンの事例は適宜紹介させていただきます。

一人一人のプレゼンをビデオに撮り、MPEGデータとして配布するという手間をかけますが、その苦労は生徒にも教員にも報われます。辰己先生のブログにて長文で失礼いたしますが、ソフトの使い方を超えた「情報デザイン」の一形態/一手法として、報告させていただきました。

投稿: VX | 2006年12月20日 (水) 23:24

すみません、コメントが遅れてます(泣)

情報デザインといえば…ということで、僕が情報デザインのいい見本として教わったポスターのURLをお知らせします。
https://www.edwardtufte.com/tufte/posters
ナポレオンのロシア遠征時の人数がどんどん減ってくる様子がわかるといういい図です。

こういう図を読めること、そして書けるようになることって、難しいけど大切なことだよなって思います。

投稿: たつみ | 2006年12月21日 (木) 12:26

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