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2006年12月17日 (日)

小学校における「情報の科学的な理解」

情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議の「第1次報告」である「体系的な情報教育の実施に向けて」(平成9年10月3日) という文書があります。これは、現在行なわれている「情報教育」の内容を規定する非常に重要な文書で、例えば情報科教育法の授業では、この文書を全部読むことは必須ともいえます。で、この文書にかかれている「情報の科学的な理解」について、改めてここで引用してみましょう。

第2章 1 情報教育の目標

(2) 情報活用の基礎となる情報手段の特性の理解と,情報を適切に扱ったり,自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解(以下,「情報の科学的な理解」と略称する。)

とあります。ここで述べられていることを、改めて文字から読み直せば、ここは情報科学ではなく、情報工学でもありません。何行か後にはこのように書かれています。

【前略】

情報に関わる学問(情報学)の成果を適切に教育内容や教育方法に取り入れ,情報活用の経験と情報学の基礎的理論と手法とを結びつけさせることで,「情報活用の実践力」の深化,定着を図ること

【中略】

なお,ここでいう情報学は,従来のコンピュータや情報通信などの分野を中心とした情報科学に,人間科学や人文社会学等への学際的な広がりを持った学問である。

【中略】

コンピュータ等の情報機器の普及や情報通信ネットワークの急速な広まりに対応して,その基本的仕組みを理解し,適切な活用方法を知ることは,生涯学習社会における自己教育力を身につけることにつながるだけでなく,国際理解教育や環境教育などで世界的規模での交流が必要となる場合には,学習手段を格段に拡げることになる。

【後略】

したがって、情報科学+人文科学+人文社会学等+「情報機器や情報通信ネットワークの基本的な仕組み」が情報学として定義されていて、さらによく読むと

  • 「情報の科学的な理解」とは「情報学を学ぶこと」
ではなく、
  • 「情報学の成果を取り入れて『情報活用の実践力』の深化、定着を図る」のが「情報の科学的な理解」である
ということになります。

さて、この「体系的な……」を読み進めていくと、後半にはこのようなことが書いてあります。

第3章 次期学習指導要領の改訂に向けた提言

1 各学校段階における情報教育の実施に関する基本的な考え方

【中略】

(次期学習指導要領を検討する上での前提条件)

【中略】

「情報の科学的な理解」及び「情報社会に参画する態度」については,情報教育に特化した教科・科目,領域等で行いつつ,その一部については,既存の教科等で行うことなどを前提として,以下の提言をまとめた。

(小学校段階)

【情報の科学的な理解に関する記述なし】

(中学校段階) 中学校では,技術・家庭科の「情報基礎」を必修扱いとした上で,「情報の科学的な理解」及び「情報社会に参画する態度」を扱う

【中略】

(高等学校段階) 高等学校では,普通教育に関する教科として教科「情報(仮称)」を設置し,その中に科目を複数設定する(いずれも2単位程度)。内容としては,「情報の科学的な理解」及び「情報社会に参画する態度」に関する事項で構成する基礎的な科目を設けることとする。

ということは、「情報の科学的な理解」は小学校で扱う必要がないということになります。この辺、もう少し調べていくと、「情報化の進展に対応した教育環境の実現に向けて」という文書が、情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進などに関する調査研究協力者会議から1998/08に答申されています。そこにこんなことが書いてありました。

(「情報の科学的な理解」の扱いと学習の範囲)

「情報活用の実践力」を単なる体験のレベルから,真の実践力,知恵のレベルに高めていくために,「情報の科学的な理解」が必要である。小学校段階では,教員側が「情報の科学的な理解」に基づいて,適切な体験ができるように授業や学習活動を設計することが重要である。

つまり、小学生に「情報の科学的な理解」をさせる必要はない。しかし、小学校の教員は自らが「情報の科学的な理解」を達成できている必要があると読める。

なんだか難しいことになってしまいましたが、要するに「小学生に情報機器や情報通信ネットワークの基本的な仕組みを教えることは、現行指導要領には含まれていない」ということです。

とりあえず、現行指導要領は現行の授業を規定している文書ですから、(研究指定校などを除けば)これに従って授業をしないと、コンプライアンス云々ということになってしまうんです。


で、ここからは私見を書きます。

「小学生に情報機器の基本的な仕組みを教える必要はない」という指導要領は、やっぱりどこかおかしいです。だからといって、あまりにも具体的に詳細な技術の仕組みを教える必要もないと思ったりします。線引きは難しいですが、USB1.1 と USB2.0 と IEEE1394 の比較とか、DVDとCD-ROMの記録方式の違いとかは、明らかに逸脱しているように思います。じゃぁ、どこなら取り扱っていいか?といわれると、現行指導要領の壁が見えます。(研究指定校を除いて)小学校では指導要領逸脱は不可能で、ということは、情報機器の特性などは小学生に教えることができないんですよね。将来、この部分を変えようと思っていても、あるいは、変える予定がわかっていても、なし崩し的に扱うことはできないんですよね。

どうすりゃいいんでしょうかね?

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コメント

教育には門外漢ですが、小学生でも情報機器は活用してます。ゲームはしてるし,携帯でiモードサービスやWeb閲覧サービスを使っている子も多いのではないでしょうか?USBとか規格がどうのこうのでなくて、情報機器がどのようなもので、インターネットが便利であり、不気味であることを教える(知らせる)のが最初になるのではないかと思います。情報機器、デジカメやビデオ、テレビ、地デジなどなど身近なものから意味を知らせる必要があるかと思います。

投稿: 島村 | 2006年12月20日 (水) 15:07

島村さん

こんにちは。

僕が書いた記事が、ややわかりにくかったかも知れませんね。記事の主旨を短くまとめると、「現在の指導要領では小学校で情報機器の操作を教えないことになっていますが、現実には必要で、でもそれをすると法令遵守に反するから、悩ましい」ということです。小学生に必要か不要かという議論ではなく、法令遵守と現実のズレを話題にしています。

もちろん、小学生に教えるべき「情報の科学的な理解」の具体的内容がどのようなものであるべきかを議論することは大事ですが、島村さんがいう「インターネットが便利であり、不気味であることを教える(知らせる)のが最初」というのは、「情報活用の実践力」というカテゴリの内容で、それは既に小学校で扱われていますので、御心配なく。

もし、このことについて知りたいようでしたら、文部科学省のページから学習指導要領をお読み下さい。門外漢の人には、ぜひとも勉強して頂きたいと思います。

投稿: たつみ | 2006年12月21日 (木) 12:35

こんにちは。1年前のものに今頃すいません。
この内容に関しては、私も何年か前に調査研究者会議の資料とか学習指導要領を素人なりの読み方をして、いろいろと考えたことがあります。
その時の記憶だけで書いてしまって申し訳ないのですが…
小学校だと「情報の科学的な理解」云々だけではなく、そもそも学習指導要領だけを読むと、コンピュータ等を活用的なことは書いてありますが、「情報活用の実践力」にしても明確に記されているところはないように思います。
調査研究者会議の資料等にしても、「その筋の人」じゃないと読んでないと思いますし、そのあたりが現場の先生方まで浸透していないのは確かだと思います。

いまは、世の中の進み方が早すぎて、こんな時代になっちゃったのでなし崩し的に小学校でいろんなことをやってるだけと感じています。

投稿: osa | 2008年1月 4日 (金) 16:44

小学校の学習指導要領の総則
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/990301b/990301a.htm

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第5 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項
1-(8)各教科等の指導に当たっては,児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実するとともに,視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。
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というのがありまして、これが「情報活用の実践力」に該当します。したがって、情報活用の実践力とみなすことで、パソコンの使い方などは、既存の各教科で取り扱うことができます。でも、「情報の科学的な理解」は入っていないと解釈するのが、自然だと思います。

投稿: たつみ | 2008年1月 4日 (金) 17:44

はい。そのあたりは理解しています。
ただ、それは最低限、私程度の知識と理解を持つ者がわかることで、その為には、文科省の「情報化への対応」のページで公開されている文書を読みふけらないと難しいと思っています。
はたして本当に、学習指導要領で明記されている、とまで言ってよいものかどうか、ちょっと私には自信がありません。
学習指導要領の「通説的な解釈」だとは思っていますが。(かなり極端な書き方をあえてしています。)

投稿: osa | 2008年1月 5日 (土) 14:13

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