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2007年3月27日 (火)

技能から技術へ、技術から科学へ(あるいは操作技能は駄目駄目という話)

日本学術会議と国立教育政策研究所が実施機関となって研究が進められている「日本人が身に付けるべき科学技術の基礎的素養に関する調査研究」(略称「科学技術の智」プロジェクト)の情報学専門部会のシンポジウムが、3月23日に乃木坂の日本学術会議の本部がある建物の会議室で行なわれました。公開会合ですが、直前まで広報ができず、しかも申込不要としたので、何人の方が御参加下さるかが当日会合開始まで全くわからず不安だったのですが、とりあえず目標の9割を越える人がきて下さいましたので、ホっとしました。

さて、ここで行なわれた会合の目標は「特定の教科教育」「いまの学習指導要領」「情報教育の現状」にこだわらず、2030年の20歳の若者がどのような情報学リテラシーを身に付けているべきかを、23年も前のいまから考えようという、荒唐無稽で、無鉄砲で、夢物語で…な話です。

この会合で発表する骨子の第0次案を作成するために、2月下旬からメールや会合で議論を続けてきました。その中に現れる言葉の定義も含めて、すこしここ(僕のblog)で話題にしたいことがありますので、書いておきます。

技能
簡単な操作レベルのこと。意図をもたない作業のこと。将棋の駒を動かすのは技能。ファイルを保存するのも技能。
技術
いくつかの技能を組み合わせて、適切な意図と、合理的な手法で組み合わされた技能の一連。
科学
いくつかの技能や技術に共通する性質を抽出したもの。

このように定義をすると、多くの人が教育として身に付けるべき情報リテラシーとは「情報に関する技術」「情報に関する科学」であって、「情報に関する技能」ではないといえそうです。ここで教育としてと断ったのは、単なる習得として(企業の研修など)という意味ではなく、卒業語も役に立つ可能性があり、ある程度の時間はその人の脳の中に残るものであることが必要という意味です。卒業後に全く役に立たないことを教えていても無意味ですよね。

それから、この委員会の議論で見えてきたことがもう一つありました。それは「情報に関する技能は未成熟で、ある技能を習得する前に新しい技能が登場する。それゆえに、情報を取り扱うには、技能をまとめた技術、あるいは、さらに普遍性をもつ科学を理解することが不可欠である」ということです。

たとえば、ある携帯電話を利用してメールを送るということを考えてみましょう。

技能
メールを送るメニューを出して、メール本体を作成して送信する操作。
技術
メールをなぜ送るか、どのようにして文章をつくるかを考えて、偶然そのときに利用する機種のメニューに対応してメールを作成する操作。
科学
携帯電話の電子メールに関するコミュニケーション上の特徴や、それを利用した人間分かのあり方、社会の変化などを考察する作業。
となります。とすると、先に述べたことは
ある携帯電話の操作に習熟する前に、新しい携帯電話に買い替えてしまう人が多い。特定の機種に依存した使い方の勉強ばかりしていても何も役に立たない。
といういい方ができます。

この辺、まだまだ理論として未成熟ですが、なんとか作っていこうと思います。

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2007年3月22日 (木)

科学だけでは解決しない難しい問題

2006年のインターネットな人達で流行したのは何か?一つだけ挙げて下さいといわれたら、僕なら「アフィリエイト」を挙げようと思う。昨年はmixi上場がニュースだったので「SNS」というのが模範解答のような気がするし、それも間違いではないけれど、SNSが流行りはじめたのは2005年のことだというのが僕の認識なのです。で、アフィリエイトなんですが、実は自分で解説記事を書いておきながら、アフィリエイトそのものを自分でやったことはないのです。それはなぜか…。それは個人的に「利益相反」に反する可能性を否定できないからです。

もし、僕が自分のblogにアフィリエイトを導入し、特に Google Adsense のようなコンテンツ連動型の広告を入れたとします。そしていつものようにblogを書いていると、コンテンツに応じた広告が挿入され、その広告を元にして商品を購入した人がいれば、僕のところに広告料金が入ってくることになります。まず、この時点で副業になるかどうかという判断が迫られます。そして、広告に掲示された企業が、僕に奨学寄付金を下さっている企業だったり、僕が審査をしなければいけない相手企業だったりすると、判断に手心を加えたのではないか?と疑われても納得してもらえる反論をすることは容易ではありません。

最近、新聞やニュースである薬を服用した人が異常行動により自殺行為を行なう例が多く見受けられているという話があります。この問題へのメディア側からの追求に対して、判断に関わった大学教授は「統計的に、差異が見られない」とコメントしたそうです。(余談:おそらく「統計的に差異がないと仮定しても、5%検定をすり抜ける」程度のことを言ったのだろうと思いますが、報道はそういうところはcutしちゃうんだろうな。)これは、その薬を服用せざるを得ないほど高熱(幻想、妄想を伴うことが多い)で重症になった人のうち、その薬を飲んだ人の異常行動の発現率と、飲んでない人の異常行動の発現率に差異があるかないかという問題なのだろうと、外部から見ていて感じました。

さらに「何をもって異常行動と判定するか」の定義も気になります。件の教授がいうところの異常行動の定義が狭ければ、結論に至るサンプル数がすくないので、「差異があるとはいえない」という結論を導くことも難しくありません。一方で、件の教授は報道機関からの取材に応えて「その程度の寄付金」という発言をしています。医学・医療の研究にかかる費用はたしかに膨大で、報道されていることが事実ならば、製薬会社からの寄付金は小額とみなせます。「科学的な結論が大事で、それにしたがって結論をしているが、それが(小額の)寄付金を出している企業に有利になったからといって何が問題なのか?」といわれたら、それにも一理があります。

逆に言い替えれば、「もし、製薬会社から寄付金をもらっている件の教授が、それゆえに(メディアの追求が面倒だから)科学的な真実を曲げて、件の企業に不利な結論しか出せない」ということになれば、それはそれで問題でしょう。だとすると、研究領域と無関係な企業が寄付を出してくれるかといえば、それは絶望的です。とすると、一つの解としては、そのような寄付金を一切もらわず、公的研究補助のみで研究をするという方針があります。政党助成金などで実現されている方法です。

さて、この問題、もう一つ厄介なことが引っかかってきています。企業が自社の商品・製品・サービスを自社開発せずに、大学に委託をするケースが最近増えてきているということです。大学側もそれを奨励していることが多く、企業と大学の関係はますます密になってきています。しかしそれが、科学的な真実を曲げるような『研究成果』を出してはならないし、研究者個人の所得に異常な影響を与える(たとえば、個人への謝礼が、その人の本給を越えるような事態)ものであってもならないと思うわけです。

でも、研究者の中には、自分と関わる企業との共同研究の成果を広く周知することで、その企業の宣伝人形になりかねない人がいます。企業と共同研究をする以上は、どこかの企業と協業することは避けられず、研究成果の公表も推奨されることなので、これを利益相反の観点から問題だと指摘されてしまうと、関わっている人は困ると思うのですが、反対側からものを見ると、のんびりとおおらかにやってられないところがあります。

話がだらだらしてきましたが、ここで気になっているのが、冒頭で述べた「アフィリエイト」です。個人的にはアフィリエイトを説明する以上、アフィリエイトを経験してみたいのですが、アフィリエイトで広告収入が上がってしまうと、それをどう扱うべきかがよくわかりません。今のところはガイドラインもなさそうなので、手を出さないで指をくわえて見ています。

ところで、もう一つ問題があります。それは公務員・大学研究者による株券の保有や投資の問題です。実は、webによる株取り引き(ネットトレード)も、記事を書くからにはやってみないと…と思っているのですが、これまた上に述べたことが気になるので手を出せません。(利益を出そうというつもりはないですが、そういうつもりで参加しないと見えてこないことがたくさんあります。)

世間では「影響力が大きい立場になったら、そういうことから手を引くように」というのが常識のようです。日銀総裁と投資ファンドの件でも、彼が日銀総裁になる前は誰も問題だと思ってなかったようです。同じ意味で、文部科学省の職員さんが、特定教具の宣伝をしているのも問題になるのでしょう。教員(教諭、教授など)として研究成果公表をする場合ならいいのかな…(よくわからない)。その意味では、昨日(2007年3月21日)の毎日新聞(東京)朝刊1面の記事には、考えさせられることがありました。日本のインターネット普及が他国に見劣りしないように様々な技術開発、政策助言、資金援助、プロモーション活動を行なってきたのは、いうまでもなく、あの先生の献身的な努力のおかげです。彼は、自分の手持ち資金をベンチャーの未公開株を購入するという形で投資しましたが、それも、技術開発と普及を意図してのことでしょう。しかしIT関連株は、上場すると価格が大化けします。そして、このことに対して利益相反の網をかぶせていいのかどうかということは、気になります。

個人的には、疑わしいことはしないようにと思って、自制をしています。でも、この問題、難しいですよね。

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2007年3月17日 (土)

科学技術リテラシー(情報分野)に関するシンポジウム【追記】

【追記: 2007/03/17】プログラムの公開が遅れていましたが、暫定版をWEBに出しました。

日本人にとって必要な科学技術リテラシーのうち、情報分野にはどのようなものがあるかを考えるシンポジウム(なんかすごい内容だ…)をすることになりました。(2007.2.28)おしらせできる内容が増えたので、追記しています。

  • 場所:日本学術会議講堂(東京都港区六本木)
  • 日程:3月23日(金曜)午後
  • 主催:「科学技術の智」プロジェクト(日本学術会議 国立教育政策研究所) 科学技術リテラシー/情報学専門部会)
  • 内容:すべての日本人のための科学技術リテラシーについて、専門委員の報告と、委員会外の識者(高等学校教諭、マスメディアに詳しい研究者)からのコメントを受ける。
  • おしらせURL→ http://kagaku.tt.tuat.ac.jp/
  • この研究は、平成18−19年度科学技術振興調整費「日本人が身に付けるべき科学技術の基礎的素養に関する調査研究」(略称「科学技術の智」プロジェクト)を利用して行なわれています。
です。詳細は今後お知らせします。皆様、予定を空けておいて下さると助かります。

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大学における情報セキュリティの現状と課題

【追記: 2007/03/17】終りました。やっぱり、それなりに参考になった話でした。ご来場下さいました皆様、ありがとうございました。

【追記: 2007/03/09】発表する3名の原稿が揃い、印刷手配をしたのですが、でてきたパワポスライドを眺めてみて、「これは意外に面白いぞ」と気が付きました。 この分野をやっている人の多くは、他大学の情報セキュリティ体制について「知ってる」という御認識かも知れませんが、実は、そうじゃなかったのだということがわかりました。

僕がここ数年、話を伺った大学は、神戸大学や東京農工大学、一橋大学などが連絡をとっている「総合情報処理センター系」の大学の事例でした。逆にいえば、旧帝国大学系の情報セキュリティがどうなっているかとか、私情協(私立大学)の情報セキュリティがどうなっているかは、(個人的なつては別として)話を伺うチャンスがなかったのです。

今回のセミナーは、

  • 旧帝大学系
  • 総合情報処理センター系
  • 私立大学
の3つの異なる系統の大学での事例を1度に全部聞けるということです。そういうものを企画していたんだということを、原稿が揃って初めて気がつきました。

来週金曜日開催です。まだ申込受付中です。是非ともお越し下さい。


東京農工大学総合情報メディアセンターでは、大学の研究基盤と情報基盤の関係について、毎年、セミナーを行なっています。

2006年度のセミナーでは、「大学における情報セキュリティの現状と課題」と題して、大学の情報セキュリティの組織的な体制(特に、CIO, CISO, CIO補佐、情報セキュリティ技術担当者などの体制や、技術的な話題)について、講演を行ないます。

当日の参加資料準備のために、お申し込みをして頂くと助かります。詳細は、御案内ページを御覧下さい。


第3回 総合情報メディアセンターセミナー
「大学における情報セキュリティの現状と課題」
1.開催日時
平成19年3月16日(金) 13時00分〜 15時30分
2.会場
東京農工大学(小金井キャンパス) 11号館5階多目的会議室
交通経路と、 キャンパス内の地図を御確認下さい。
3.プログラム
  1. 開会挨拶 (13:00〜13:10)
    東京農工大学 総合情報メディアセンター長兼CIO補佐
    寺田 松昭
  2. 大学における情報セキュリティの確保について (13:20〜14:40)
    1. 大阪大学の事例
      大阪大学 サイバーメディアセンター
      中野 博隆 教授
    2. 早稲田大学の事例
      早稲田大学 メディアネットワークセンター
      前野 譲二 客員講師
  3. 東京農工大学の取り組み (14:40〜15:15)
    東京農工大学 総合情報メディアセンター
    辰己 丈夫 助教授
  4. コーヒーブレーク (15:15〜15:30)

(引き続き同一会場で共生情報工学シンポジウムが開催されます)

4.意見交換会
生協食堂 18:00〜19:30 (会費2,000円)
5.参加申し込み
資料準備のために、お申し込みを頂けますと助かります。
ご参考
なお、本セミナーの直後、同日・同室にては、本学 共生科学技術研究院主催の「共生情報工学シンポジウム」を開催します。併せて御参加下さい。

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2007年3月 9日 (金)

教育用プログラミング言語ワークショップ2007「ワープロ07」

【追記】いよいよ明日です。そろそろ会場定員からみて、いい感じのお申し込みを頂いているそうですが、もし、申込をしていないのに行こうと思っている方がおられましたら、お申し込み下さい。


【2007.03.05追記】いよいよ今週土曜日に開催となりました!まだ会場に余裕がありますので、お申し込みされていない方は、是非ともお申し込み下さい。

3月10日(ほぼ終日)に一橋大学(東京都国立市)で開催します! 主催は 情報処理学会 情報処理教育委員会 です。 詳細は近日公開ですが、昨年とやや違って、 午後は分科会形式をとる予定です。

皆様の御参加をお待ち申し上げております。 http://sigps.tt.tuat.ac.jp/ws070310.html

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2007年3月 2日 (金)

ジョーシン07 の予定

今年のジョーシン07は、「教科『情報』の教員養成」を扱うことになりました。過去2年のジョーシンと同じように、多彩な意見を頂き、議論を深めていきたいと思っています。すなわち、情報処理学会の委員会の見解のみならず、他学会や現場の先生方の御意見なども伺い、「決起集会」や「誓いの会」にならないように運営したいと思っています。

日程は10月27日(土曜日)です。場所は過去2年と同じ早稲田大学で開催予定です。

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