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2007年3月22日 (木)

科学だけでは解決しない難しい問題

2006年のインターネットな人達で流行したのは何か?一つだけ挙げて下さいといわれたら、僕なら「アフィリエイト」を挙げようと思う。昨年はmixi上場がニュースだったので「SNS」というのが模範解答のような気がするし、それも間違いではないけれど、SNSが流行りはじめたのは2005年のことだというのが僕の認識なのです。で、アフィリエイトなんですが、実は自分で解説記事を書いておきながら、アフィリエイトそのものを自分でやったことはないのです。それはなぜか…。それは個人的に「利益相反」に反する可能性を否定できないからです。

もし、僕が自分のblogにアフィリエイトを導入し、特に Google Adsense のようなコンテンツ連動型の広告を入れたとします。そしていつものようにblogを書いていると、コンテンツに応じた広告が挿入され、その広告を元にして商品を購入した人がいれば、僕のところに広告料金が入ってくることになります。まず、この時点で副業になるかどうかという判断が迫られます。そして、広告に掲示された企業が、僕に奨学寄付金を下さっている企業だったり、僕が審査をしなければいけない相手企業だったりすると、判断に手心を加えたのではないか?と疑われても納得してもらえる反論をすることは容易ではありません。

最近、新聞やニュースである薬を服用した人が異常行動により自殺行為を行なう例が多く見受けられているという話があります。この問題へのメディア側からの追求に対して、判断に関わった大学教授は「統計的に、差異が見られない」とコメントしたそうです。(余談:おそらく「統計的に差異がないと仮定しても、5%検定をすり抜ける」程度のことを言ったのだろうと思いますが、報道はそういうところはcutしちゃうんだろうな。)これは、その薬を服用せざるを得ないほど高熱(幻想、妄想を伴うことが多い)で重症になった人のうち、その薬を飲んだ人の異常行動の発現率と、飲んでない人の異常行動の発現率に差異があるかないかという問題なのだろうと、外部から見ていて感じました。

さらに「何をもって異常行動と判定するか」の定義も気になります。件の教授がいうところの異常行動の定義が狭ければ、結論に至るサンプル数がすくないので、「差異があるとはいえない」という結論を導くことも難しくありません。一方で、件の教授は報道機関からの取材に応えて「その程度の寄付金」という発言をしています。医学・医療の研究にかかる費用はたしかに膨大で、報道されていることが事実ならば、製薬会社からの寄付金は小額とみなせます。「科学的な結論が大事で、それにしたがって結論をしているが、それが(小額の)寄付金を出している企業に有利になったからといって何が問題なのか?」といわれたら、それにも一理があります。

逆に言い替えれば、「もし、製薬会社から寄付金をもらっている件の教授が、それゆえに(メディアの追求が面倒だから)科学的な真実を曲げて、件の企業に不利な結論しか出せない」ということになれば、それはそれで問題でしょう。だとすると、研究領域と無関係な企業が寄付を出してくれるかといえば、それは絶望的です。とすると、一つの解としては、そのような寄付金を一切もらわず、公的研究補助のみで研究をするという方針があります。政党助成金などで実現されている方法です。

さて、この問題、もう一つ厄介なことが引っかかってきています。企業が自社の商品・製品・サービスを自社開発せずに、大学に委託をするケースが最近増えてきているということです。大学側もそれを奨励していることが多く、企業と大学の関係はますます密になってきています。しかしそれが、科学的な真実を曲げるような『研究成果』を出してはならないし、研究者個人の所得に異常な影響を与える(たとえば、個人への謝礼が、その人の本給を越えるような事態)ものであってもならないと思うわけです。

でも、研究者の中には、自分と関わる企業との共同研究の成果を広く周知することで、その企業の宣伝人形になりかねない人がいます。企業と共同研究をする以上は、どこかの企業と協業することは避けられず、研究成果の公表も推奨されることなので、これを利益相反の観点から問題だと指摘されてしまうと、関わっている人は困ると思うのですが、反対側からものを見ると、のんびりとおおらかにやってられないところがあります。

話がだらだらしてきましたが、ここで気になっているのが、冒頭で述べた「アフィリエイト」です。個人的にはアフィリエイトを説明する以上、アフィリエイトを経験してみたいのですが、アフィリエイトで広告収入が上がってしまうと、それをどう扱うべきかがよくわかりません。今のところはガイドラインもなさそうなので、手を出さないで指をくわえて見ています。

ところで、もう一つ問題があります。それは公務員・大学研究者による株券の保有や投資の問題です。実は、webによる株取り引き(ネットトレード)も、記事を書くからにはやってみないと…と思っているのですが、これまた上に述べたことが気になるので手を出せません。(利益を出そうというつもりはないですが、そういうつもりで参加しないと見えてこないことがたくさんあります。)

世間では「影響力が大きい立場になったら、そういうことから手を引くように」というのが常識のようです。日銀総裁と投資ファンドの件でも、彼が日銀総裁になる前は誰も問題だと思ってなかったようです。同じ意味で、文部科学省の職員さんが、特定教具の宣伝をしているのも問題になるのでしょう。教員(教諭、教授など)として研究成果公表をする場合ならいいのかな…(よくわからない)。その意味では、昨日(2007年3月21日)の毎日新聞(東京)朝刊1面の記事には、考えさせられることがありました。日本のインターネット普及が他国に見劣りしないように様々な技術開発、政策助言、資金援助、プロモーション活動を行なってきたのは、いうまでもなく、あの先生の献身的な努力のおかげです。彼は、自分の手持ち資金をベンチャーの未公開株を購入するという形で投資しましたが、それも、技術開発と普及を意図してのことでしょう。しかしIT関連株は、上場すると価格が大化けします。そして、このことに対して利益相反の網をかぶせていいのかどうかということは、気になります。

個人的には、疑わしいことはしないようにと思って、自制をしています。でも、この問題、難しいですよね。

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