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2007年5月23日 (水)

『携帯オンリー デジタルプアの壁』を読んで〜やっぱり、初等中等教育から情報教育を削減しちゃ駄目です。

現在発売中のAERAに『携帯オンリー デジタルプアの壁』というタイトルの記事が掲載されています。電車の吊り広告では、その見出しを

  • PC使えず、閉ざされたケータイ世界に生きる10代20代
  • 安易に日雇いバイト→下流のスパイラル
  • 家庭と学校で決まるデジタル格差
としています。情報教育とは無関係ではないと思ったので月曜日に購入して中身を読みました。

記事の概要は、「電車の吊り広告の見出しにあったこと」が詳しく述べられているものでした。詳しく知りたい方は、ぜひ入手して読んでください。僕個人は、「特定の単語を含む検索ランキングを、クライアントがPCの場合と携帯電話の場合で比較したもの」がおもしろいと思いました。

また、記事を読んでみて、「ケータイばっかりでPCが使えないと、なぜデジタル格差の下側に行くのか」という観点で情報教育の重要性をわかり易く説明する努力が、私たち情報教育の研究者に求められているようにも感じました。

昨今、情報教育といいながらワープロ・表計算ばっかりでは駄目だという意見が多く聞かれていますし、僕もそういうことをあちこちで話をしていますが、「なぜ、ワープロ・表計算ばっかりでは駄目」なのかを理論化するのは、意外に難しいのです。ただ、「やがてPCはなくなり、コミュニケーションツールは携帯に一本化されるのだから、ワープロ・表計算なんてやらなくてもよい」という意見には反対です。

確かにコミュニケーションツールとしては携帯の方が優れているのだろうと思いますが、情報を処理・加工するツールとしての携帯電話には限界があります。未来の携帯電話がそのような機能を持つようになる可能性はゼロではありませんが、所詮、携帯電話にできるようなことは、携帯電話にできるようなことでしかないのです。(トートロジー入ってますね。) 言い替えるなら、パソコンのOSを含む携帯電話並の大きさの機械が出来ても、そのパソコンができることは携帯電話のユーザインターフェースでできることを越えない。携帯電話では文書作成も、会計処理も、統計予測もできない。その意味では、「携帯電話ではできない情報処理のリテラシー」を身に付けることが「誰にでもできることではない情報リテラシー」になるのでしょう。

また、記事が指摘しているように、この種のリテラシーの習熟度と、学習者(児童・生徒・学生)の家庭環境・学校環境の(金銭的な意味での)整備度合が相関しているようです。僕はこれを、「学校と家庭」という記事と同じ2つの観点で見るべきなのだろう思いますが、もうすこし考えてみると、こんなことなのだろうと思います。

  1. 保護者が教育にお金を払うかどうかと、お金を受けとった先の学校が適切な情報教育を行なっているかどうかの掛け合わせ。
  2. 保護者が家庭で情報教育に配慮しているかどうか。

そしてこの状況が、記事でいう「デジタル格差の下流スパイラルから抜け出せない『携帯ばっかりの利用者』」を救い出せない構造をつくり出しているのだろうと思います。

うん、やっぱり、初等中等教育から情報教育を削減しちゃ駄目です。

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コメント

ちかくにMOUSの資格をもっているからと就職した方がおられます。
 でも,電子メールのマナー(Subjectくらいつけてよ,とか,署名とは,の以前に,送信する前に自分の書いた文章をもう一度目を通して読める文章かどうかを確かめることくらいしてよ)はご存知ない。携帯メールしかしてないので,Toでメールアドレスを入力するということが理解できないみたいでした。
 そういうレベルだから「プロキシーって何?」と聞かれても「はいはい,それはおまじないです」と答えましたが,「WWWブラウザで見てって何?(「インターネットしてってことですか?」と聞かれた)」とおっしゃる。
 そういう方がつい最近まで学校におられたわけですから,ため息ついてては駄目で,なんとかしないと社会は崩壊しますよね。

投稿: 落伍弟子 | 2007年5月23日 (水) 21:17

落伍弟子さん、こんばんは

本当にそんな人が目の前にいたら、「あなたが取得した資格って、あなたの何を保証しているの?」って聞いてみたくなりますね。

ところで、
http://www.jiten.com/dicmi/docs/w/12610s.htm
の「Toaster Computer (Toaster PC)」にもあるように、Steve Jobs は「誰でもトースターのように簡単に使えるパソコン」を目指したそうですが、僕は昔昔、この話を聞いた瞬間に「そりゃ、むりでっせ」と思いました。というのも、「トースター並に簡単に使えるパソコンは、所詮、トースター程度のことしかできない」からです。

だからこそ、情報教育をする意味(必要性)があるんだと思います。

投稿: たつみ | 2007年5月23日 (水) 23:18

まぁ,ご本人は「無知ですいませんねぇ」と頭を下げておられるようです。取得したWordとExcelのMOUSが再就職に役立つとは思っておられたのかどうかは知りませんが。
 WordとExcelが使えるけどPowerPointは自信が無いとおっしゃるのもねぇ。最初のコメントに書いたような状態は,「Office2007だと私の資格は意味ないです」と白状してるようなもんですしね。学校にもおられたようなので,キューブやスマイルの使い方ならご存知なのかも。
 しかし,本当に「特定のアプリケーションの操作教育」しかしていないことについて学校現場は危機感はないのかなぁ。というか,ありそうに見えないのが「おっとろしい(最上級)」です。

 あ,Aeraを買ってきました。これから読みます。

投稿: 落伍弟子 | 2007年5月23日 (水) 23:47

落伍弟子さん、おはようございます

うーん。1999年に僕は、早稲田の授業で「まずパワポから」始めました。ソフトウェアの出来うんぬんは置いといて、「生まれて初めてパソコンを使う人」には、パワポから入るのがいちばん楽なんですよね。語数が少なくてもいいし、色とか飾りとかが多いのでモティベーションが維持できる。パワポをある程度使えるようになれば、ワープロも使えるようになります。

だから「WordとExcelが使えるけどPowerPointは自信が無い」という時点で現状を把握してみようという態度に欠けていて、さらに、操作の裏にあるメンタルモデルを認識できない人なのだろうと思います。一連の操作を状態変数のつながりというメンタルモデルに抽象化することができない教師は、IMEひとつ教えることなんてできないと思うんですけど。

数学だったら、「事例→公式→応用」という過程で学ぶわけですが、それが「事例→チャート」で止まってしまうのと同じ。英語でも「単語と文例を覚えろ」までで終了するのと同じ。だから、ちょっと応用した問題がでてくると「公式になかった」「構文として習ってなかった」といって途端にできなくなるんでしょうね。

うむ。

投稿: たつみ | 2007年5月24日 (木) 07:20

内田樹の「下流指向」に「文化資本格差は単調に拡大する。なぜなら下の階層の人は,文化資本を備えた他人がいることを認知できないから」というような話があったのを思い出しました。コンピュータで何ができるかを知らない人が,ケータイより高価なパソコンにそれだけの価値を見出せないのは当然のことです。パソコンが紙の延長のように簡単に使えるようになることは望ましいことですが,紙でできることをただディスプレイに表示しているのでは価値がない,そのことに気づく機会を与えたいと考えています。
# 情報の授業って,大人(同僚とか)にこそ必要だと思う。

投稿: わたやん | 2007年5月24日 (木) 23:26

それいいですねえ。教員研修として、高校で「情報」の先生が
同僚に「情報」の授業をやると。

投稿: 久野 | 2007年5月24日 (木) 23:34

>下の階層の人は,文化資本を備えた他人がいることを認知できない
 ブルデューが解いたハビタスのなぞですね。文化的再生産。この話を聞いたとき,一番ショックだったのは,「知能指数というのはエリートの文化に合わせて作成されている」ということ。自分の土俵で相撲をとれば,そりゃ高得点が得られるはず。

>紙でできることをただディスプレイに表示しているのでは価値がない
 とはいえ,ワープロは文書の「清書機」であり,そのハードウェアが専用機からパソコンに変わっただけだと根底で考えているセンセイ種族がいる限り,情報教育は進まないでしょう。

投稿: 落伍弟子 | 2007年5月26日 (土) 04:14

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