「情報教育の音楽化」第1期の実証実験
財団法人ヤマハ音楽振興会の「ヤマハ音楽支援制度」による補助金を利用して、「『情報教育の音楽化』と『音楽教育の情報化』 音楽文化を広める情報教育を目指して」の実証実験に該当する授業を、東京都立町田高等学校で6月18日、20日、23日の3回に渡って、実施しました。
授業では、楽譜構造とプログラム構造の類似性に注目し、プログラミング言語による楽譜作成を通して『プログラミングを体験すること』を最大の目標としました。ここで『体験』が重要としているのは、この授業の目的がプログラマを育成することではなく、また情報科学の研究者を育てることでもないからです。「すべての日本人に、各学校で数時間のプログラミング体験をして欲しい」というのが、今回の授業目標設定の背景でもあります。(誤解しないように書いておきますが、「数時間」というのは、例えば高等学校3年間で74単位*35週=2590単位時間のうち、おおむね 4〜8単位時間くらい = 0.23%程度という意味です。)
主たる環境にはプログラミング初心者用のオブジェクト指向言語「ドリトル」を利用しました。ただし、「プログラミング言語はひとつしかない」と思われると誤解だし、この授業で「音楽プログラミング」に目覚めた生徒さんがいたら、もっと伸びて欲しいということもあったので、3日目にはテキスト音楽プログラミング環境の「サクラ」の紹介を酒徳さん(サクラの作者)にお願いしました。また、ドリトルの音楽機能以外の部分(ドリトルの本流)についても兼宗先生に御紹介頂きました。兼宗先生はドリトルのコードもチラ見させてくださいました。(これで生徒たちにとっては3つ目の言語になりました。)
また、生徒の作品は Moodle のフォーラムに掲示してもらうことで、友人同士で作品を交流することができるようにしました。
利用する楽曲は、せっかく音楽振興会から補助金を頂いたのだから…ということで JASRAC への申請(&著作権使用料支払)をすることを前提にし、「いま、流行している様々な曲もOK」ということにしました。受講生(第2期11月開催も含む)+スタッフで合計100名程度と限定的ですが、それでもネット配信を行なうので JASRAC の担当の方とは数回やりとり(電話含む)しました。JASRAC さんも初めてのケースということでいろいろ判断をして頂きました。授業の最終日には、生徒たちは好きな曲の楽譜を教室に持ち込んで、どんどん入力をしていきました。
一部の生徒は音楽よりプログラムの工夫を始めましたが、多くの生徒は音楽表現の工夫として「デバグ→テスト→デバグ→テスト…」を繰り返しました。いずれにしても授業の目標のひとつである『プログラミング体験』は、生徒たちにとっては無意識か意識的かはわかりませんが、十分達成できました。ドリトルは、一般的なDTMソフトと違いプログラムで楽曲を記述するので、無意識的とはいってもプログラミングの体験をもってくれたと思います。教室にいた生徒たちが、将来、情報システムを利用する側になったり、あるいは情報システムを注文する側になったときに、この授業の経験を思い出して、利用や発注に気を付けてくれたら(無理な納期はいわない、仕様はちゃんと書く…etc.)、それだけでも十分な意義があったと思えます。また、音楽表現にこだわろうとする生徒さんが多かったことは、補助金を出して下さった財団法人ヤマハ音楽振興会への報告するにあたり、「補助しがいがある結果」につながったと思います。
実際の授業では様々な問題点が出てきました。工夫すれば克服可能なものもあれば、大規模な開発をしないと克服できないものなどいろいろ見つかりましたが、とりあえずは第2期の実証実験に向けて、教材の改訂とLMSの改造を行ないたいと思います。
最後に、参加された方のblogの、この日の様子の記事へのアンカーをつくっておきます。
【2007.06.26追加】
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