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2007年7月27日 (金)

追い風報道に油断してはいけない

毎日新聞社のweb記事に 教科「情報」 中教審専門部会で学習指導要領改訂の審議再開が掲載されました。(詳しくは記事を御覧下さい。なお、記事中の「必修」は「必履修」の意味だろうと思います。)記事の概要は、「情報」の重要性について追い風的な内容が審議されたというものです。その部分だけを見ると、高等学校の教科「情報」は、今後単位数拡大もあるかもしれないほどの追い風的意見がならんでいるように見えます。

しかし、追い風報道に油断してはいけません。全国高等学校校長協会は、中央教育審議会に要望書を出したそうです。(要望書中の「必修」は「必履修」の意味だろうと思います。校長会はプロだろ。情けない…。)

この件については、都立府中西高校の佐藤先生(今日、これからプ会で話をして下さいます。)や、三重大学の奥村先生のブログでも話題になっていますが、そもそもの問題として、高等学校はいったいどういう機関なのか、高等学校の社会的機能は何かということを忘れた要望であろうと思います。

まず、日本国憲法の第26条には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」とあります。ここでいう普通教育とは、専門教育と対比される概念です。そして、学校教育法第41条には「高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。」とあります。特に普通高等学校では、普通教育を行なうということです。

高校生程度の発達段階であれば、さまざまな機器の仕組みなどを抽象的に見る能力を養う絶好の段階です。ということは、国民の多くが日常的に使わざるを得ない情報機器について、その仕組み、抽象化されたコミュニケーション論などを学ぶには、高等学校こそふさわしいといえるのです。

追い風の報道に安心していると、大変なことになるかも知れません。ここは油断せずに、「よい情報教育の必要性」について、きちんと説明していきたいと思います。

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2007年7月19日 (木)

「段ボール肉まん」に踊らされた人々

あまりにも馬鹿らしいニュースなので手短に。


この件が話題になったとき、ビデオ映像を見た僕は「これは変(話が嘘っぽい)だ」と直ちにわかりました。僕の周りの人の中には、僕がそのころから「あのビデオは変だ。やらせだろ。」と言っていたことを知っている人もおられるでしょう。だからいわんこっちゃない…。ちゃんとメディアリテラシーを持っていれば、あの映像のカメラの位置が良過ぎることや、話がおかしい(普通なら病人が出るようなものを10年前から売っていて平気なはずはないでしょ。)こととか、キャッチーな話題性があり過ぎること(小説は事実よりキャッチーなのです。)にすぐ気がつくでしょう。

件のニュースで騒いでブログをたくさん書いた皆様、お疲れさまでした。徒労でしたね。

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2007年7月14日 (土)

SSS2007参加申込開始

情報処理学会「コンピュータと教育研究会」が主催する「情報教育シンポジウムSSS2007(鈴鹿, 2007/8/26-28)」が、参加登録受け付け開始!となりました。 詳しくは、 http://ce.eplang.jp/index.php?SSS2007#r82ab7c6 を御覧下さい。とりあえずの登録締切は、 2007年7月30日(月) 夜23:59 です。皆様のお申し込みをお待ち申し上げます。

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SSS2007参加申込開始(予告)

例年よりやや遅れてしまっていて、皆様に御心配をおかけしているSSS2007の参加申込ですが、そろそろ始まります。今年は、

  1. まず、SSS Moodle! に登録する。
  2. 宿泊状況などの調査登録をする。
という2段階のステップを踏みます。月曜には受け付け開始になると思います。

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2007年7月11日 (水)

firefoxurl

CNET Japanの記事に、「IEとFirefoxをインストールしている人は要注意--「非常に重大」なセキュリティリスク」というのがあった。そこには、URLを埋め込むときに、http://〜 と書かずに、firefoxurl://〜 と書くと、IEが Firefoxを開く機能があり、それを悪用することができる…というものだった。

で、ためしに以下のようなHTMLソース(実物はISO646文字)を書いてIEで開いてみたんですが、なぜか Firefox が無限個起動ループに入りました。


<html>
<body>
<a href="firefoxurl:http://www.hoge.jp/">URL</a>
</body>
</html>

これって、クラッシャー?

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blogの更新が止まっています

書きたいことは沢山ありますが、すみません、最近blog更新をする余裕がない状態です。今週末には、ちょっと余裕を出したいです。

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2007年7月 5日 (木)

SSS2007でフルペーパー採録と守秘義務の話

2007年度の情報処理学会の情報教育シンポジウムSSS2007(鈴鹿)の採録論文一覧が公表されました。僕は昨年のシンポジウムでは実行委員長をしていたので、論文投稿をしていなかったのですが、今年は役員からも外れましたので、頑張ってフルペーパーで応募してみました。結果はフルペーパーで採録されました。

論文の査読プロセスというのは学会ごとに異なると思います。論文の種類や位置付けについても学会ごとに異なると思います。今回のSSS2007の場合は、プログラム委員長である中野由章先生(現在は千里金蘭大学だが、その前は三重県立名張西高校教諭)、および大会委員長の奥村晴彦先生(三重大学)が中心になっていろいろ決められました。僕は、諸事情(このブログ記事で後述)からシステム担当として関わりました。

SSS2007の場合、公開されている論文募集要項をまとめ直すと次のようになります。

  1. 投稿者が希望カテゴリを指定して、論文を投稿
  2. 査読者2名(実践とデモは1名)に査読依頼。
  3. 2名の査読結果をひとつにまとめて、採録カテゴリを決めた上で採録結果を仮報告
  4. プログラム委員会全員で採録結果が適切かどうかを相互に点検。
  5. 最終的な採録決定。
  6. 著者に報告。

実は上記プロセスには、重要な役割を持つ人がいます。それはメタレビューアという人です。この人は、各論文1つにつき1名いて、その論文の査読・採否決定作業を司ります。僕が「司る」と書いたのは、責任者でも決定者でもないという微妙な立場を表現したかったからです。そのようなメタレビューアが1名いるからこそ、論文が忘れられたりせず、不公平な扱いをされたりせずに査読が進むのです。

ところで、論文投稿をしたひとの名前は、誰が知っているでしょうか? SSSの場合、査読用の論文には、著者名を推測し易くなるような情報を入れないことを要求しています。ですから、投稿論文ではA大学B学部のように具体的な名称を入れることができません。誰がどの論文を投稿したかということは、プログラム委員長と大会委員長のみが知るということになっています。僕は投稿システムを作りましたが、実はcgiで決められた論文番号と査読システムへのID+PWが、一体誰に配られたのかという記録ファイルを、自らも見ることができないようにしました。また、各論文のメタレビューアが誰かということ、査読者が誰かということも、僕自身がわからないようにシステムを作りました。

ということで、採否結果が本人(=僕)に通知されるまで、実はドキドキもので、どうなるだろうかと気を揉んでいたのです。

すこしだけ解説をします。査読の際の情報制限は、かなり厳しくするように設計する必要があります。上記のプロセスでいえば、メタレビューアは誰の論文かということを知らず担当し、2名の査読者も、誰がもう一人の査読者かということも、誰の論文かということも知らずに査読します。プログラム委員のなかには(僕もそうですが)自分自身も投稿した人もいます。そういう人に情報が洩れないように議論することも簡単ではありません。

そこで、今回採用したのが Moodle でした。Moodle に、投稿者専用のID・PWを与え、査読者専用のID・PWを与え、誰になにを与えたかはプログラム委員長と大会委員長以外は知らないようにしました。そして、投稿者も査読者もMoodleの学生権限を設定することで、互いの情報伝達(漏洩)が起こらないようにしました。メタレビューアにはMoodleの教師権限を与えることにしました。また、論文ごとに異なるコースを設定することで、自らも投稿しているメタレビューアは、自分が投稿したろ論文の査読プロセスを見ることができないように設定しました。

既成のCMSをオンライン投稿・査読システムに改造できるか…という挑戦だったのですが、実はいろいろ苦労しました。その結果として見えてきたことがたくさんあります。それは CE91@高知工科大学 でお話したいと思います。

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2007年7月 2日 (月)

危機管理を学ぼう

光の三原色は?と聞かれたら、「赤」「青」「緑」と答える人が多いですね。「原子番号の小さい順に元素記号を10個言って下さい」を頼むと、例の語呂合わせ「水平リーベ、僕の船」を思い出す人が多いですね。

そこで、同じようにして次の4つを覚えて下さい。「1. 防御」「2. 事前準備」「3. 対応」「4. 事後処理」また、次の5つを覚えて下さい。「T. 技術」「C. 経費」「E. 教育」「R. 制度」「L. 規則」そして、最初に覚えた4つと、次に覚えた5つを組み合わせると、合計20通りが存在します。「防御」+「経費」とか、「事前準備」+「規則」とかです。

この仕組みを覚えたら、危機管理の入門の半分は終りです。残りの半分は「リスク評価」という作業です。(何がリスクかを探し、その危なさを測る作業。)

このブログの読者の皆様、身の回りの「危ない!」と思うことを一つ思い出して、その危なさをたとえばお金や確率で表してから、それに対する「事前準備」+「規則」を考えてみて下さい。あるいは「事後処理+教育」を考えてみて下さい。このようにして、20通りのすべてについて、何か方法がないかを考えて下さい。

それが危機管理(リスクマネジメント)なのです。


重要な情報が入ったパソコンを盗まれたとき(紛失したとき)のために、パソコン内部のデータを上手に暗号化しておくことは重要です。これは、「重要な情報が入ったパソコンを盗まれる」というリスクに対する「事前準備+技術」に該当します。

また、盗まれたときのことを考える人は、当然、普段から盗まれないようにすることも考えるべきです。でも、盗まれないようにする対策をいくら行なっても完璧ではないからこそ、盗まれたときのこと考える必要があります。

しかし、世の中には「盗まれたときのことを心配する前に、盗まれないようにすることを考えろ」という人がいます。この発言者は危機管理を全くわかってない。「事故が起こらないように運転することが大事であって、シートベルトについて言及するな」というのと同じです。

僕は、以前からこのブログで重要ファイルの暗号化の必要性を述べてきましたが「暗号化さえすればいい」と述べているわけではないのです。でも、そう解釈されるのは心外です。「暗号化よりも盗まれない対策を」ではなく、「防御」「事前準備」「対応」「事後処理」をすべて考えようというのが正しい危機管理で、だからこそ、冒頭の20通りの作り方を覚えて頂きたいと思ったりしています。

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