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2007年12月17日 (月)

情報教育の音楽化(第2期)詳報

以前からこのブログでも取り上げている「情報教育の音楽化」プロジェクトの一貫としての授業を、10月末〜11月に、大阪府立桃谷高等学校で行ないました。やっと、ブログに取り上げる時間的余裕がでてきたので、遅くなりましたが報告します。


今年は、財団法人ヤマハ音楽文化振興会の「ヤマハ音楽支援制度」による補助金に採択されまして、それに関する研究活動をしています。第1期の活動の内容はすでにお知らせした通りですが、それの第2期の活動を行ないました。

内容の基本的な展開は第1期とほぼ同じです。すなわち、プログラミングの入門としてドリトルを使用した楽譜処理を取り扱いました。テキストも、第1期とほぼ同じものを使用しました。少しだけ違うところとしては、第1期ではオンライン版ドリトルだったのが、今回はインストール版ドリトルになったことです。インストール版の方が生徒さんの負担(?)は少ないのですが、一方で、この授業のためにインストール作業を必要とします。もうひとつの違いは、第1期は「特別授業」ということで、希望者のみ参加、放課後実施だったのに対して、第2期は「情報B」の授業の中に織り込んで、対象となったクラス全員実施だったことです。あとは、第1期は典型的な都立進学校ですが、第2期はそうではない(そのまま就職する生徒さんもいる)というのも、学校の背景として違うところです。

9月に下見に行き、10月・11月の3回の授業をすべて見せて頂いて、その様子などや授業アンケートなどを頂きました。


印象的だったのは、生徒たちがだんだん熱中していく様子です。授業の最初は「なんだこれ」という態度を見せていた生徒もいましたが、授業が進むにつれだんだん「音が鳴っておもしろい!」になり、さらに「音楽になっておもしろい!」というようになっていきました。好きな楽曲(それは、たいていは日本のポップス)を入力してみて、それを自分で聞いて修正していく作業を繰り返していく過程で、何人かの生徒たちは本当に没入して取り組んでいました。

我々、外部の人間がたくさん見学にいっていたことも理由のひとつだとは思いますが、普段の授業とは違う雰囲気で授業は進んでいったそうです。それから、担当の野部先生は、僕がお願いした3回を越えて6回の授業をこのために割り当ててくださった(ゆえに僕は見学に行けなかった!)のですが、「早く曲を完成させたい」という生徒からの意見がでてきたとのことでした。生徒に達成感・満足感も与えることができたと思います。

ただ、アンケートの分析はまだ途中ですが、ちょっと困ったなぁということがひとつわかってきました。それは、自宅にパソコンをもっている生徒さんと、そうでない生徒さんで、やっぱり取り組み方や興味感心に大きな開きがでてしまっているようなのです。以前もこのブログに書きましたが、広く情報教育の成果が普及していくためには、義務教育や高校・大学などの一般教育の領域で、十分な情報教育を行なう必要があるのですが、家庭環境が大きな要素として入り込んでしまっていることがアンケートと理解度調査の相関として現れていそうです。


第1期、第2期の授業を通してわかったことのひとつとして「今の教材をどの学校でも実施できるとはいえない」ということです。実施前から予想していたことで、だからこそ、音楽に興味をもっている情報科の先生にお願いしたのです。言い替えると、担当の先生が音楽に関して全く無知かつ無興味だと、やっぱりこの教材では難しいと思います。でも、逆に、そういう知識を少しでもお持ちの先生ならば、プログラミングを学んだり、著作権を学ぶ道具として、ひとつの有効な選択肢になり得ることは、実証できたと思います。教材をある程度作り直すと、より多くの先生に実施して頂けるだろうとも思いますが、それにさらなる洗練が必要ですね。


もうひとつ、(誤解されている方が多いようなので)ここに書いておこうと思うことがあります。今回の授業は「情報教育の一貫としてプログラミングを入れるべき」という主張の上に成立しています。決して『ドリトルを普及させるための手法』ということではありません。実際、「情報教育の音楽化」というテーマは、僕自身は1998年からやってきている取り組みで、兼宗先生と出会ったのはもっと後(2001年)、ドリトルのことをちゃんと知ったのはさらに後(2003年)、ドリトルの音楽演奏機能を使いたいと申し出たのはさらに後(2005年)です。

また、職業訓練のためのプログラミングとしてやっているつもりもありません。初等中等教育では、料理の体験も、方程式を解く体験も、歴史をたどる経験も必要で、それと同じようにプログラミングをする体験も必要だと思っていますが、それが直接生徒たちの能力に役に立つ必要はないと思います。もちろん、間接的には役に立って欲しいと思いますが、生徒に日本地理を学んでもらうのは「日本中どこにいっても道に迷わないためだ」なんてナンセンスですよね。そんな直接的なことばかり教えてしまうとバージョンアップに耐えられない硬直的な知識(道が変わったら目的地にたどり着けないような人)ばかり教えることになります。それは逆効果です。


てなことで、いろいろ遅くなりましたが、まとめてみました。この内容の概要は、CE92(沖縄)で発表しました。また、それに考察を加えてて英文にしたものを発表できるように準備中です。研究として終ったものではないので、今後も引続き取り組んでいこうと思います。

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コメント

コメントをしようと思いつつ、のびのびになっていたので・・・。年がかわってしまう前に、簡単にコメントです。

あと、音楽が目的なのか、プログラミング体験が目的なのか、さらに、プログラミングの基礎も少し教えていきたいのかというところで、何時間するのかというのも変わってくるとおもいます。今回、予定外の6回ぐらいまで伸ばしたひとつは、折角なので、テキストにのっている分をきちんとやっておきたかったことと、やはり授業なので入力を中途半端でおわらせたくないという2つの理由です。テキストの内容をしようと思うと、生徒の理解度にもよると思いますが、やはり3回(6時間では無理ですね)

去年というか今年はじめの授業でも感じたことですが、やはり音がでるというのは、興味深いようです。ただ、授業として取り入れていく場合、音楽が得意でない生徒にも負担のないようにという配慮は必要でしょうし、それならば、授業方法や内容にさらに工夫が必要だと思いました。

私自身は楽譜も読めますが、それでも、多くの生徒から一度に、「これどう入力するの?」と聞かれたら対応し切れません。まして、興味がある程度では大変だと思います。
ということで、生徒に配慮するということは、教員にとってのハードルも低くなるのではないかなあと考えます。

音楽を取り入れることが有効であるということの実践だけであるなら、今回の授業でいいかもしれませんが、さらに取り組んでいくなら(というかたぶん私はすると思いますが)、次回はこのあたりを工夫したいですね。

投稿: みどり | 2007年12月31日 (月) 14:23

野部先生

コメントありがとうございました。

今回の研究は「音楽文化を広める情報教育」なので、まぁ、あれでもよかったんですが、僕がずっと手掛けてきたことを実現しようとするならば、もう少し教材を易しくするだけでなく、さらに情報の教員にとって教え易いようなものにする必要はあります。はい。正月はそれをやろうかと思っているのですが、部屋掃除や、古くなって色が狂っているテレビの撤去・交換などに時間がとられています。野部先生には、今後とも、御協力を頂けますと幸いです。別件の話はまた、どこかで。

投稿: たつみ | 2007年12月31日 (月) 15:31

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