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2007年12月29日 (土)

「情報リテラシー」その4

4. 高校の現状をもっと知ろう

具体名は伏せますが、いろいろな高校を訪問したり、訪問した人からの報告を聞いたりしていて、多くの関係する研究者が予想しているような状況が現実になっていることを確信しつつあります。それは、いまの高校の情報教育の実施状況は、大きく4つに分かれている(もちろんたくさんの例外もありますよ…)ということです。

  1. 進学校では、いまでも情報という名前で数学や物理などを教えている。あるいは、数学や物理に役に立つ情報Bを教えている。前者と後者では「情報の授業実施」という意味では大違いだが、進学校で普通に情報Aのワープロ・表計算・プレゼンというところはあまり多くない。
  2. 大学進学者があまり多くない学校では、就職して役に立つことを目指した資格試験対策的な授業が「情報A」の名前を借りて(検定教科書を使わずに)行なわれているか、あるいは、単に授業に集中させることを目的としたネットサーフィンとプレゼンソフトのアニメーション機能遊びをやっている。これも前者と後者では内容が大違いだが、いずれにしても「情報A」の授業とは言い難い。
  3. いわゆる中堅校といわれている高校では、情報Aや情報Cをかなり真面目に取り組んでいる先生・生徒が多い。
  4. 一部のスーパー先生がいる学校では、その学校が進学校であろうと中堅校であろうと進学率が低い高校であろうと、「情報科」の授業目標をトコトン追求した授業が行なわれている。

で、「情報」の名前を使って数学や物理をやっている場合と、検定試験対策やネットサーフィン遊びで時間を潰しているだけ場合については、「こんな情報の授業ならやらない方がマシ」といえます。特に検定試験対策の授業の場合は、定期試験に各メニューの位置(順番)や名称、その機能などの正誤問題を好んで出題する教師が多く、アプリケーションのバージョンアップなどに全く耐えられない硬直化した生徒をつくり出す。裏事情では、『検定試験』を出題しているテスト提供企業が、そんな「正誤問題」を出題し、それらの資格の取得を教員に奨励するエライ人達がいて、結果としてこういうことになったのだろうということは推測できるので、先生だけが悪いとはいいません。

ということで、これらの状況を見ていると、全国高等学校校長会が「『情報』を必履修から外せ」と言いたくなる気持ちは理解できなくもない。ところで、僕はある高校で教頭先生に「『情報』の学習に、もっと多くの人が取り組むようにするためには、どうすれば言いですか?」と聞いてみた。その回答は僕の予想通り「入試にでること」でした。必履修であり続けるために必要なことは、こういう「やらない方がマシ」な情報の授業をやめさせることと、もうひとつは大学入試への出題を行なうことだろうと思う。

そう言えば先日、某所でNIMEの清水センター長が「次の学習指導要領で、『社会と情報』『情報の科学』の2科目になりました。これで入試に出し易くなります」と発言されていた。その場にいた国立八大学「情報入試WG」の雨宮座長がニコニコしていました。「入試」の方はこうやって解決しそうなので、あとは資格試験対策の授業を駆逐する方法を、いよいよ本格的に考えないといけないなぁ。

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