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2008年4月30日 (水)

ディテール(背景)が気になる

今年も新入生向けの情報スキルを含む授業を担当することになり、4月冒頭から授業が始まっているのですが、そういえば最近の学生さんのキーボードタイピングはどうなっているのだろうと気になって、学生さんにインタビューをしていろいろ調べてみました。そしたら、やっぱりというかなんというか、ほぼ全員がキーボードタイピングの練習をちゃんとやったことがない。で、なんとなく打てるようになっているけれど、あんまり速く打つことができないという状況でした。

そこで、タイピング練習ソフトの使いかた(某英文学科の情報リテラシのクラスを担当していたときに発見(?)したタイピング練習の極意)を教えようと準備をしていました。昔は、無料の和文タイピング練習ソフトというのがあまりなく、英文用の typist などを使っていましたが、いまはいろいろフリーやシェアウェアでタイピング練習ソフトがあるようで、お試しにいろいろ使ってみました。そのなかでおもしろいと思ったのは、

でした。中身は普通のタイピング練習ソフトなのですが、背景に写っている写真を見ていると、作者がどの町、というか、どの駅を中心とした徒歩圏内で撮影をしたかがよくわかります。

特に、いまはもう取り壊された建物が背景に出ているのを発見したりして、おもわず感動でした。なお、このソフトは寄付希望のフリーウエアですので、継続的に使用される際は、寄付金をお支払いくださいね。

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2008年4月28日 (月)

「有害情報のフィルタリング」への私論

最近、携帯フィルタリングに始まるコンテンツ規制と、それに反対する活動家の人達のblog記事を追っかけています。僕は、この辺の話題を、既にあちこちの研修や講演などで口頭では触れてきたのですが、自分のblogではちゃんと書いていなかったような気がするので、表明しておきたいと思います。

情報の規制は検閲行為なので、やらない方がいいのはもちろんです。ただ、それを理由に一切のフィルタリングに反対するのもどうかと思います。

「コンテンツ規制がなぜ必要か」ということを解こうとする多くの人は「悲惨な犯罪や心の傷が増えるような状況を早く止めたい」という思いが動機となって動かしているのだろうと思います。(そのような人達の中には「コンテンツ規制を利用して人の心に情報操作をしたい」という裏の意図を持っている人も少数はいるかも知れません。)

一方、「コンテンツ規制を、何故やってはいけないか」を解こうとする人達の多くは、「どのコンテンツが不適切か」を【誰か(おそらく政府)】が勝手に決めて、それを押しつけることによる影響についての心配をしているのだろうと思います。(ただし、そのような人の中にはコンテンツ製作側(「犯罪に関わる情報を取り扱っているので、自分たちを検挙する理由が増えて困る」という活動家の人や、CGI動かして株価を上げて儲けようと思っている人達)の人も(そぉっと)隠れていて、商売をしづらくなることに反対ということもあるでしょう。)

で、「反対側の論理の根拠」の根拠として、僕の目で重要に見えたのは「その人(反対側で主張する人)は、子どもの頃に、そのようなものを見てきたけど平気だった」という認識です。一方、賛成側の人は、その論理をうまく崩せていおらず議論が噛み合ってないように見えます。

僕が見るに、この問題の大きなポイントは「(1)ネットとは無関係なモラルや人権の問題として認知できるか?」「(2)被害者の(被害を受ける前の)気持ちになれるかどうか?(黄金律の欠如)」「(3)危機管理意識で統合的に社会コストを議論できるか?」だと思います。

最近、「情報モラル、情報倫理、情報危機管理」の3つのそれぞれを、発達段階と、発達段階ごとに設計された教育カリキュラムと関連付ける分析をしています。例えば、多くの高校生に野良MP3(DRMなどの著作権保護されてない)が利用されている問題や、「学校いじめサイト」などの問題、携帯電話を利用した出会い系サイトなどの問題などは、法令と技術とが複雑に絡んでいますが、その根底にあるのは「(a)悪いことをしていはいけない」「(b)危ないことをしてはいけない」ということが、子どもたちの心の中に正しく理解されているか?ということです。

そして、「(a)悪いことをしていはいけない」というのはモラルや人権の問題であり、「(b)危ないことをしてはいけない」というのは危機管理の問題です。本来、モラルや人権の問題は小学校の集団生活、特に遊びを通じて獲得され、一方、危機管理の問題は金銭的コストやトレードオフ、利害関係の調整を含めて、職業人に必要とされるものです。それら((a)と(b))を教師が無意識のうちにゴチャマゼに教えてしまうと、「何が悪いことで、何が損なことなのか」をわからない子どもが出来ます。その結果は、善悪観念が希薄な子ども、誤った前提に基づく危機管理にこだわる子どもをつくり出しているような気がします。

小学生に携帯電話を持たせることの是非について、方々でいろいろ議論が行なわれています。(2.4GHz帯域が成長段階にある細胞の分裂に与える影響もありますが、この記事では言及しません。)「犯罪発生件数が増加している現在、外出する子どもの安全を確認したい」(*1)と考える親にとっては、子に携帯電話を持たせることも有効な手段です。しかし、携帯電話は親子の関係のみならず、所持した途端に社会との関係を作り出します。その「社会との関係」を遮断する規制がフィルタリングに他ならないといえるでしょう。

特に低学年〜中学年の小学生が、世界の子どもたちと、あるいは遠くの都道府県に住む子どもたちとインターネットを使って交流し、そこから地球人として育っていくための関心と態度を涵養するという話はとってもきれいですが、それは、子どもが持っている携帯電話を使って行なうことではなく、学校の授業の中で行なえばよいわけです。だから、携帯電話で社会のいろいろな人と交流する必要はない、ということはいえます。

それから、フィルタリング反対論者の多くは、おそらく「器用」と言われて育ってきた人であり、だからこそ「その人が子どもの頃に、そんな(わいせつな/グロい/恐い)ものを見せられても平気」といえるのだろうと思います。しかし、被害者・加害者になってしまった子どもたちは、そもそも意思疎通などで不器用な人、あるいは思い込みが強い人だったのではないでしょうか?被害者が、被害を受ける前に世界をどう見ていたか、何を感じていたかを本人の気持ちになって想像できれば、「コンテンツ規制一切反対」という主張はできないはずです。

おそらく、子ども用の携帯電話は、極端にいえば両親・親戚や学校・警察などにしか通じないようにし、メッセージサービスも匿名ができない仕組みを提供することがいいように感じています。一方、小学校などでは、パソコンを使った遠隔地交流も含めた学習を行なっていけばいいと思います。その過程で情報技術や情報社会を体験することができるでしょう。携帯電話もパソコンも、同じメールの仕組み(smtp)、同じwebの仕組み(http)の上に構築されていますが、学校教育上の利用は全く異なります。異なることを認識しておかないと、この議論は、とんでもないところに結論を見出しそうな気がします。

ところでもうひとつ重要な問題があります。規制反対論者の多くの人が、子どもたちに対する「情報教育の重要性」を訴えています。これはこれでおっしゃる通りなのですが、一方で、誰が教えるのか?何を、どのように教えるのかということにまで具体的で効果的に見える提案はされていません。小学生に携帯電話を「けいたいでんわ」とし、著作権法を「ちょさくけんほう」とすれば解決するような問題ではありません。今まで、日本国憲法よりも詳細な法令が小学校や中学校で取り上げられてこなかったのは、法曹関係者が文部科学省に働きかけていなかったからではありません。小学生・中学生は、法の存在意義や、具体的な法令を学ぶ適切な発達段階に達していないからです。さきほど述べたように「僕は小学生の頃にそれをわかっていた」という反論は、ここでは機能しません。国内あまねくすべての生徒に義務教育として理解できて、達成感を味わえる内容として法を取り扱うことは困難であると思います。

また、教育の問題がなかなか簡単に解決しない構造的な原因の一つとして、問題を解決する・効果を上げるために必要な時間が長過ぎるということがあります。例えば、今(2008年)から「小学校の情報教育を充実させて……」という活動を始めようとするなら、まずは教員養成・現職教員への研修を誰がやるかという話から始めることになります。それができて始めて教員養成・現職教員への研修が可能となります。そして研修を受けた教員が教壇に立って授業をして、その授業を学んだ児童・生徒が大人になって…とやるとすぐに10〜20年もの時間がかかります。

その間に子どもたちを取り巻く情報スキル(今だとパソコンや携帯電話の使用方法)や、情報危機管理の具体的な内容は変化してしまい、役に立たなくなります。だからといって、「今の社会に直結した情報スキル」でもなく、「利害関係の調整などを必要とする情報危機管理」でもない、例えば情報科学や情報社会学のように応用が可能な基礎的な(抽象的な、あるいは学問的な)内容を、日本中の小学校で全児童に定着させることは困難(たぶん無理)です。

「教育を充実させよ」という提言(例えば MIAU の提言)は、それはそれでうれしいんですが、一方で、「そんな簡単に充実することは不可能」ということもわかって欲しいです。3分で食べられるカップ麺が100円で売られていたときに、「300円出すから1分で食べられるようにして欲しい」とお願いするようなものです。そんなの無理。

「じゃあ、辰己はどうすればいいと思っているのか?」といわれても、回答困難です。理想的にはこうすべきというのはありますが、明日からそういうことにすることは不可能です。指導者育成が間に合わない。しかも、それを事態は待ってくれない。とりあえずは、小学生程度が利用する携帯電話のフィルタリングは、現状を維持していくのが正解なのでしょうね。


ところで、今話題の法案についてもすこし触れます。18歳未満とか、政府が決めた唯一の委員会で基準作成というのはよろしくないなぁと思います。まず、ある程度は透明性があって、しかも定期的に委員が入れ替わる30名くらいの大きな委員会があって、そこがフィルタ製造者を認定するって話にして欲しいかな。フィルタ製造者は複数、できれば100や200くらい設立されていて、それぞれのフィルタには個性(?)があってよい。そして、自宅に一定年齢未満の児童がいる家庭は、認定を受けたフィルタ製造者のどこかかと契約(事実上は携帯電話会社やプロバイダーのサービスに「お勧めのフィルタ」として組み込まれる。)し、契約IDなどを通信事業者に通知する。フィルタ使用料金は携帯電話会社やプロバイダ経由で利用者に請求される。また、こういうことをしなかったときの罰則は携帯電話事業者やプロバイダに科す。

イメージとしては、クレジットカード発行会社と、利用者と、利用される企業の関係に似ています。クレジットカード発行会社=フィルタ製造者、クレジットカード番号=契約ID、利用者=家庭、利用される企業=通信事業者です。

そうなると、各家庭(多くの場合は通信事業者のオススメにしたがって)は、苦情が少なくて、安くて、対応が早いフィルタ製造者を選ぶでしょう。そういう競争原理を入れておかないと、使いやすいフィルタを追求する行動も起こらないでしょうし、フィルタリング技術自体の洗練もされないと思います。また、子どもは未来のお客さんですから、例えばフィルタ使用料金が毎月10円/1回線だったとすれば(それでも12億円/年の大市場)、その程度の金額は通信事業者が負担できます。

一方、コンテンツ提供側は、robots.txt や E-mailのSPFに似ていますが、コンテンツの対象年齢と内容についての「タグ」をつけることでフィルタを回避する(ホワイトニング)権利を持てるようにする。つまり、通信事業者とフィルタ製造者に、そのような抜け穴を用意することを義務づける。もちろん、ページの内容とタグが一致していないコンテンツ提供者にはその限りでなく、フィルタ製造者に信用されなくなり、抜け穴を閉じられ普通のフィルタを通ることになる(それでも通り抜けることは可能)だけの話。また、内容的に「まったくまずくない」のなら、こういう工夫をしなくてもフィルタを普通に通る(そして、ブラックなら落される)ようにしておく。今の電子メールが、だいたいそんな感じですよね。ホワイトリストは素通し、ブラックリストは遮断、それ以外はフィルタで判定です。

そして、あとはこういう仕組みにできたとして、その特性を利用者全体が共有するための社会教育(生涯教育)による啓発活動も重要ですね。

まだ、自分でもよく練られた提案だとは思いませんが、一応考えてみました。でも、誰もまともに取り上げてくれないだろうな。


(*1) 2008年5月3日、カギ括弧を追記し、言い回し修正。

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2008年4月21日 (月)

SSS2008絶賛(?)申込中

1999年に始まった情報処理学会のコンピュータと教育研究会が主催する夏の情報教育シンポジウム、通称 SSS の第10回大会である SSS2008 ですが、現在、発表申込と、発表申込とは別に参加申込が公開されています。

今回は、初の海外開催ということで、交通費が従来よりやや高くなってしまいます。実行委員長の中野先生(千里金蘭大学)が、あちこちと交渉してくださったおかげで、通常の価格よりかなり低廉な価格での参加が可能になっていますが、これも早めに申し込まないと普通の運賃になっちゃいいますので、発表する予定の人も、そうでない予定の人も、早めに行動を起こしてください。


SSS2008概要

日程
2008/08/19(火)〜21(木)
場所
済州大学校、済州オリエンタルホテル
文部科学省、他、各種団体の後援・協賛予定
発表申込締切
2008年5月16日(金)
参加申込締切
(割引)2008年5月31日(土)
(通常)2008年7月15日(火)

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2008年4月 7日 (月)

プログラミング・情報教育研究会(そのE)

2008/04/16(水) 18:00開始で、プログラミング・情報教育研究会の第E回(略して『プ会E』)を開催します。

今回は「プログラミング」を主テーマにしています。

ビューティフルコード
久野 靖(筑波大学大学院)
ドリトル V2
兼宗 進(一橋大学)

会場は新宿区内です。詳細は、プ会WEBを御覧下さい。

御参加希望の方は、僕にメールで御連絡下さい。

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2008年4月 1日 (火)

「情報倫理デジタルビデオ小品集3」の入手方法

blogの更新は、4月7日まで自粛の予定ですが、この件だけは特別なので掲示します。

「情報倫理デジタルビデオ小品集3」の入手方法が、

  • http://www.mitomo.co.jp/online/shop01/moral3.html
に掲載されました。御用命の際は、上記URLからお申し込みください。


追記(2009/03/30)

三友株式会社のサイト構成が変わったので、URLが変更になっています。

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