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2008年5月28日 (水)

講演会で感心した話

「仕事以外で辰己丈夫」の方に書くか、こっちに書くか悩んだんですが、とりあえずこっちに書きます。


今日、ある団体の総会に参加しました。その総会の後半にある記念講演会にて、地震工学の専門家で、東京大学生産技術研究所の 目黒 公郎 先生のお話を伺うことができました。地震に対する防災意識の啓発に関わる講演でした。数値をきちんと求めて対策をすること、実験をして対策をすること、マスコミなどで注目されていたり検証もされてないで報道されていることに騙されないようにすることなど、情報の授業においても頻繁に語られることを、地震被害者や地震報道の実例などを紹介しながら説明してくださいました。

あまりにも多くのことに感心しましたが、書き切れないので話の詳細は、目黒先生の本をお買い求めください。ここでは一つ、僕が「もしかして」と以前から思っていたことが講演の中で触れられ、僕が思った通りだったという話を紹介しましょう。

いまから2年6ヶ月前からの2005年11月、国土交通省が、ある建築事務所が設計・計算したマンション・ホテルの耐震強度が偽装(構造計算書の不正)されていて、法令で定められた強度をもっていないということを公表した、あの有名な事件です。あの事件が発覚した直後、テレビニュースでは、リポーターが「欠陥マンション」とされたマンションに住んでいる人にマイクを向け、住民が「イヤー恐いです。いつ地震が起こるかと思うと、もう、夜も寝られません…」と答えている様子を報道していましたが、僕は「それなら、現在の強度を定めている法令の改正前に建てられたマンションの住民はいったいどうなの?」と、すぐに疑問に思いました。法令改正前に合法的に建てられたマンションでも、現在の基準では強度不足ってことがあるに違いない…と。今日、その答え(?)らしい話題がでてきました。やはり僕が思った通りで、国内の住宅総数4700万棟のうち1150万棟の建物が、現在の基準では強度不足だそうです。だから、「地震が恐くて寝られなくなりました」と嘆いている人をみて、気の毒だとか、いろいろ考えながらテレビを見ていた人は、実は、もっと危ない建物に住んでいたんだそうです。

他にもいろいろなことが語られました。とても勉強になりましたし、また、話の仕方のうまさも感銘しました。

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2008年5月26日 (月)

プログラミング・情報教育研究会(そのF)

本日開催ですので age ておきます。


2008/05/26(月) 18:00開始で、プログラミング・情報教育研究会の第F回(略して『プ会F』)を開催します。

今回は「高校教科『情報』の未来」を主テーマにしています。

「次の学習指導要領」の次
小原 格(東京都立町田高等学校)
2030年の二十歳の情報リテラシー(あるいは、「新学習指導要領に期待すること」のつづき)
辰己 丈夫(東京農工大学)

会場は渋谷区内です。詳細は、プ会WEBを御覧下さい。

御参加希望の方は、僕にメールで御連絡下さい。

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2008年5月12日 (月)

またいろいろたてこんできました

相変わらず自転車操業です。


さらにいくつか追加しておきます。

  • 2008PCカンファレンスでの発表原稿
  • 某原稿
  • 某本の執筆計画
  • 某本の増補+改訂(その1)
  • 某本の増補+改訂(その2)

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2008年5月 9日 (金)

小学生には複数のソフトウェアを活用し「遊び」を通して因果関係を

昨年春頃から、情報リテラシーって何だろう、情報活用能力って何だろうということについて、いろいろと調べたり、調べた結果を元にした意見をあちこちで述べています。昨年度のSSS2007でもこのことについて述べ、このブログでも昨年暮れの記事で発達段階ごとの情報リテラシーについて述べました。そして、3月下旬に都高情研の年次総会で基調講演を担当させて頂きました。そこで述べた話が、教育家庭新聞の最新号にでています。その内容を引用しましょう。

例えば、発達段階毎に考えると、小学生には複数のソフトウェアを活用し「遊び」を通して因果関係を学べるような体験的な活動を行わせる。中学生には、内容の整理と抽象化を通し、広く言語活動的と関わらせる。高校生には、振り返りを重視し、具体物から抽象化を行わせる。そして大学では、抽象的な概念から具体物に落とし込む演繹を意識的に行なうこと。

「操作教育が駄目」の部分だけ切り出されて過剰反応されてしまうと困りますが、昨年のSSS2007でも、このブログの記事でも、「小学校程度の発達段階では、複数種類(なるべくたくさん)のソフトウェアの使用経験が重要である。」というのが僕の一貫した主張です。

詳しくは、教育家庭新聞を入手して御覧ください。

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2008年5月 8日 (木)

教育情報化コーディネータ検定試験(3級)の受付開始

2006年も、このblogで宣伝協力?したのですが、今年もJAPETで実施している教育情報化コーディネータ検定試験の受験受付を開始したという連絡が届きました。試験の申込は5月30日までで、http://www.japet.or.jp/itce2008/20youkou.htmlで受付中です。


僕は、試験実施後にコメントを依頼されていて、ときどき意見を送っているのですが、有難いことに僕の意見も尊重して頂いておりまして、翌年度の作題に反映されています。特に「いわゆる技術的な話題」には気を使ってもらえているようです。

ところで、コーディネータには一体何が求められているのだろう?という人もいると思うので、ちょっとだけ解説です。本来、コーディネータというのは、いろいろな専門性がある人の間で調整をする仕事です。ですから、狭く深い知識よりも、多少浅くても広い知識と、そしていつでも知識や能力を深めることができる柔軟さが必要です。教育情報化コーディネータの場合は、生徒、現場の先生、管理職の先生、保護者、地域、教育委員会、文部科学省、ベンダ業者、ソフトウェア・ハードウェアメーカの間に立って利害関係の調整をすることが求められます。また、それらの人とお話ができる広さ、新製品や新しい事件・事故への興味・関心が必要となります。その点が従来の検定試験の類とちがうので、過去問もある程度参考にしつつも、最近の問題・話題などを含めて対策を立てるといいと思います。

過去問やパンフレットは、http://www.japet.or.jp/itce2008/left.htmにあります。(blinkがうるさいですね。)ちなみにテストは紙と鉛筆を使うのではなく、コンピュータ上で動く専用ソフトを利用します。e-testingです。

なお、この「3級試験」は、一定の経験がないと受験できません。一方、大学生でも受験できる「情報活用指導力検定試験」というのもあります。(僕は勝手に4級だと思っています。)

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2008年5月 3日 (土)

ほんとうの旅に出よう

先日、最近の日本の若者が海外旅行に行かなくなった原因が、PCとネットで「旅行気分」になったからであるという、なんやらオカシナな報告がでました。これ対して、「ネットで猛反発」という記事も出てきました。僕自身も、最初の「ネットで旅行気分になったから」とう意見には、「そりゃうそでしょ」と直感しました。旅行業界が自分らの無策を棚にあげてネットのせいにすればいいってもんじゃないでしょ。ただ、旅行業界の意見も、反発したネットワーカーの意見も、もうすこし掘り下げて考えるべきだという気がしています。

世界的にも希有とさえいえるほどに日本では休日・祝日が多いのも、ハッピーマンデーが現実になったのも、土曜日に学校がお休みなのも、旅行業界の業界をあげての陳情活動があったのではないでしょうか?にもかかわらず若者が海外に行かない、さらに、実は国内旅行すらしなくなりつつある原因の一つは、実は、旅行そのものに魅力がないからでしょう。決して「PCとネットで旅行気分になった」のではありません。

それから、旅行業界自体がPC・ネットから不可分な業界になってしまったことの分析も甘いと思いました。

昔は、大手の旅行会社が募集したものは、多少高い旅行費用でも安全・安心という文化がありました。そして、旅行相談は旅行企画・手配会社に頼めばOKでした。旅行会社に手配してもらっていた時代は、客は口頭で、あるいは書面でチケット手配を頼めばよく、もし、旅行会社の社員が万一機械の操作ミスをして誤ったチケットをとってしまったとしても、そのときに発生する費用は旅行会社が負担し、客に負担しなくても済んだのです。また、客は、よくわからない言語でのチケット手配をする必要もなかったのです。

それが、PC・ネットの普及にともない、利用者はリスクを自分で引き受ける代わりに、より安いチケット、安いホテルを自ら探すようになりまた。普段は見ることもない文字や単語が表示されたwebサイトと格闘し、手配ミスのときの解約手数料を払うリスクの覚悟をしてでも、自分で動くようになりました。もちろん、リスクを引き受けた以上はトラブルも甘受せざるを得ないのですが、そこでトラブルを回避するための情報もまた、PC・ネットを利用して得られるようになっています。さらに、同じ内容なら安く手配する方法などもPC・ネットを利用して調査することができるようになりました。例えば、価格比較サイトをみている客のほぼ全員が、(同じ信用度の会社同士なら)1円でも安いところに注文します。

つまり、旅行業界が儲かっていた「古き良き時代」は、客のリスクを引き受けることが原動力だったのでしょうと言えます。それがPC・ネットのおかげでリスクと利益の引き受け手が「情報をもった賢い客」に移動していったとも言えます。ただ、話は簡単でない側面があります。確かに賢い客は1円でも安いところに移っていきますが、多くの人にとっては旅行自体が非日常の行動です。つまり、1円でも安い業者を探すために必要な時間と、それで得られる利益とが釣り合うか釣り合わないかも重要な問題です。毎日のように忙しく仕事をして、年に1回行くか行かないかの遠距離旅行しかしない人にとっては、サイトを見ている時間や、PCを使って調べている時間が無駄。マイレージだって関係ない。となると、旅行業界のみなさんは、こういう人を主な顧客にしないとだめなんだろうと思います。若者は時間があり、若者はもともと財布のヒモが堅く、そして、若者は情報(PC・ネット)を使いこなすのですから、旅行業界のエライ人が考えるようにお金を落してはくれませんゼ。

さて、こんどは若者側に話を変えてみます。

なぜ旅行に行かないのか?という原因はいろいろありますが、やっぱり大きいのは「旅行に行く暇がない」「旅行に行く金がない」「旅行そのものに興味がない」の3つでしょう。暇がない人は2つにわかれていて、仕事の調子が良過ぎて暇がない人と、生活費を稼ぐために一生懸命で暇がない人で、後者は2番目の理由も付随します。整理しなおすと、

  • 1. お金はあるけど暇がない
  • 2. お金もないし、暇もない
  • 3. 暇はあるけど(お金の有無に関わらず)興味がない

に分類できそうです。ここで 1. に分類される人向けには旅行業界が暇を作ってもらえるほどに魅力的な商品を作ればいいだけです。2. に分類される人は、仮に貯金を貯めて旅行に出たとしても、旅行業界が満足するようなお金の使い方をしないので、旅行業界の人は儲けの対象に考えず、将来のことも考えて、格安のエコノミー座席・安いホテルをちゃんと供給すべきです。一方、3. に分類される人のことは、真剣に考える必要があると思います。もし旅行業界のみなさんが、3. に該当する人にもっと旅行をして欲しいのならば「旅行よりも楽しいことがある」「旅行はは面倒」という意識を変える活動をする必要があります。

そして、話は冒頭に戻ります。若者の教育機会をドンドン奪って、お金を使う家族旅行を奨励してきた旅行業界は、実は、そういう若者のしっぺ返しを受けたということだと推測しています。語学/自然/歴史について学び、疑問をもち、そして大学生になって時間ができて旅に出る教育を経由するという流れを邪魔することに、旅行業界も加担した結果だと感じています。因果応報。

そういえば先日、「日本より明らかに物価が安い発展途上国で部屋を借りて、働かずに、遊びもせずに暮らす若者が増えている」というニュースを見ました。その若者たちは、お金がなくなると帰国し実家に住み、アルバイトや派遣で2〜3ヶ月仕事をして、ン十万の貯金を得たらまた出国して海外で暮らす。その程度のお金でも、国を選ばなければ1年くらい暮らせる。そして貯金がなくなったらまた帰国してアルバイト…なんだそうです。滞在国では仕事も遊びもなにもせずに部屋にひきこもり、寝て、インスタント麺を食べ、テレビをちょっとみるだけだとのこと。

そういう人生の選択をした人を批判することは簡単ですが、なぜ、そういう生活が成り立ってしまうのか、それでいいと本人が考えているのかを改めて考え直すと、一概に批判することもできません。1年間のほとんどを働かずに生活できるのですから楽なもんです。そういう人達に「人生」や「命の大切さ」を解いても、「そんな宗教的な/道徳的な話題はイヤ」という反応が返ってくるに違いないでしょう。(僕は個人的にはもう少し「円」が強い通貨になっていいとは思いますが、そうなればなるほど、上に述べたパターンの生活が楽にできるようになります。むむっ。)

社会全体の幸福も重要だけど、個人の幸福も重要で、これらが対立したときは、多くの人は個人の幸福を優先します。日本の少子化なんてのは、そういう判断が積み上がった結果だと思います。

なんだかうまくまとまらなくなりました。ここでは「ほんとうの旅に出よう」という言葉で締めたいと思います。それは、旅行業界のためでもなく、一人個人の幸福のためだけでもなく、見聞を広めるための旅行。お金をかけなくてもできる旅行もあるでしょうし、かけないとできない旅行もあるでしょうが、毎日同じ生活に変化を起こさないと、おもしろくない。それに、変化をおもしろいと思ってくれる人がもっと増えるといいなって思ったりもしています。

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2008年5月 1日 (木)

referer spam の急増

例えば、ある人が、僕のblogへのリンクを作り、普通のブラウザ(Mozilla Firefox, Apple Safari, Microsoft Internet Explorer)で、そのリンクをたどった人がいたら、webブラウザがもつ referer という変数領域を読み出すことで、そのページを訪れる直前に、どのページを見ていたかということ、つまり「いつ、どのページからここに来たのか?」という情報を得ることができます。通常は自分のページへのリンクはどこにあるのかを調べたり、自分のページがどんな言葉で検索されたのかを知るために利用します。

ところが、「referer をたどったら、単なる広告サイトだった」という「 referer を利用した spam」ともいうべきアクセスの発生数が、今年3月下旬から急増し始めています。refererを偽装することで、広告サイトに導こうとするのでしょう。たぶん referer spam と呼ぶんでしょうけど、どうなんですかね?

ちなみに、mixiの足跡機能も同様の仕組みです。で、足跡スパムは昔からたくさんありますね。ただし、mixiの足跡スパムは、「誰がアクセスしてきたんだろう?」と思って見に行くと、足跡をつけたアカウントの日記っぽい記事の中に出会い系サイトを紹介するリンクが置かれているというもので、足跡スパムをつけるのは簡単ですし、それを確認したあとも実際にmixi外へのリンクをたどらなければ何もトラブルにならないという点で、まだ、恐怖とは呼べない状態でした。その点、referer spam は危険度が高いと思います。

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