「授業の最適化」への私論
Okumura's Blogの記事にコメントしようと思ったら、量が増えてしまったので、自分のblogに書きました。
授業でのICT活用の話題と情報教育の話題を混同する人もいるので、注意してこの話を進めないといけないと思いますが、それはそれとしておいといて……
授業のやり方そのものが情報化されていないという点においては賛成ですが、どの授業はどのように情報化すべきかということは、対象領域によって大きく異なりますね。高校生君だと、学んだ領域が広くないから、そこから結論をだしてしまいがちですが、世の中は広いので、彼が思うとおりにいかない領域があるでしょう。
で、高校生でも学ぶ数学の授業の場合だと、板書をノートする時間は無駄ではなく、式変形を自分で身につけるために必要な時間です。一方で、わかりにくい3次元図形の様子などを無理に板書でわからせようとしたり、線形計算(掃き出し法)を過剰な板書でわからせようとするのは、教室にパソコンとプロジェクターが使えない場合の古い方式に過ぎないでしょう。
あと、数学と、【数学的な理解】の授業は異なりますので、そこんところも注意が必要です。数学は学問。【数学的な理解】は実地への応用を向いた「応用数学」ですね。日本はフィールズ賞受賞者を輩出できるのですから、数学教育としては間違ってません。しかし、国民全体の数学活用能力は決して高くない。それは【数学的な理解】をやらずに、学問としての「数学」をやっているからです。(僕が先に指摘した授業は「数学」の授業の例です。)
昔、SSSで「情報教育は情報化されているか」という題名の発表をしました。そこでの分析では、情報化には4つのステージがあって、教具の情報化、過程の変化、目的の変化、教育順序の変化です。PCやネットを使って授業を変化させるのは、そのうち「教具の情報化」の段階にあって、そこから学習過程の変化や、さらに学習目的の変化、そして学習順序の変化まで進むと、ある程度変わったということができると思いますが、一方で、教具の情報化は情報技術に強く依存しているので、日常的な安定が得られていない。結果として、常に教具の情報化に足元をすくわれつつ授業改革を進めていかなければならない、そういう時代が現代なんだろうと思います。
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コメント
数学の授業での板書とPC利用について,私の考えは
http://www.meigaku.ac.jp/~watayan/doc/20040818/img10.html
以降に書いたようなことです。
投稿: わたやん | 2008年6月 7日 (土) 22:20
授業の最適化というから、脱線する授業とか、裏話の禁止かと思ってしまいました。
いや進学系の学校では本当に禁止されるそうですから~
投稿: あびり亭 | 2008年6月 8日 (日) 00:37
>わたやんさん
URLを開けません…orz
投稿: たつみ | 2008年6月 8日 (日) 11:13
>あびり亭さん
そんなふうに管理側主導で授業を規制しなくても、雑談が多い授業へ生徒からの支持(人気)がなくなれば、自然と変わっていくと思うんですけどね。いわば市場原理ってやつです。
ただ、高校や中学の場合は、予備校や大学と比べると、受講者側からの調査が行なわれにくい傾向にありますね。
投稿: たつみ | 2008年6月 8日 (日) 11:17
すいません。そういえば今,学校が工事停電中です。今夜には復旧します。
投稿: わたやん | 2008年6月 8日 (日) 17:11
>わたやんさん
「板書でのフリーハンドの作図は生徒にとっての理解を助けるための見本」という意見には、まったくそのとおりだと思います。
ただ、だから常に板書で作図すればいいというものでもないと思います。コンピュータで書いていく様子を画面で見せて、それから教師が手書きでフォローしてみて、その様子からわかることだってあると思います。
それから、やや無関係?な話題かも知れませんが、こんな話を思い出しました。
x^2+y^2+z^2=1 の不透明な球上にA(0, 0, 1)とB(0, 0, -1)をとります。
ここで視点をC(2, 0, 0.99999)におくと、A, B はどちらも見えない。D(2, 0, 1)におくと、Aはかろうじて見える。E(2, 0, 1.000001)におくとAのみ見えるわけです。でも、どこに視点を置いても、A,Bの2点を同時に見ることはできない。
直線ABはこの球の直径になるのですが、直径の両端点を黒板上に書かれた円(球面の黒板への射影でできた円)の上にとってはいけないのです。
これをわかってフリーハンドで板書作図しても、いまいち実感がわかないのです。これはなぜだろうか…。
投稿: たつみ | 2008年6月11日 (水) 09:05