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2008年12月23日 (火)

新「高等学校学習指導要領」(案)の情報科関連部分を読む

今朝から、情報処理学会の初等中等情報教育委員会のメーリングリストで、昨日公示された高等学校学習指導要領の案について意見交換をしています。

で、どうなのか?ということですが、情報Aがなくなったことを除くと、現行指導要領と比べて大きな差はありませんが、よく見ると小さなことはコツコツと変わっています。細かいことは奥村先生のblog中野先生のWiKiにも出ていますが、ここは僕なりの見解を書いてみます。

  • 普通教科「情報」
    • 社会と情報
      1. 「情報社会の課題と情報モラル」とあるが、その内容はモラルとはほど遠く、危機管理、法令、セキュリティ中心。
    • 情報の科学
      1. コンピュータの仕組みへの時間配分が少ないような気がする
      2. データベースをつかった情報喪失を全員が体験するのは困難だと思う。そもそも、データベース自体、高等学校普通教科「情報」で取り扱うのは座りが悪いという意味で難しい。
        • スプレッドシートのようなデータを集めて表にしたものを「データベース」と称するなら、中学校までのスキルで十分OK。
        • SQLなどの言語を使うことまで考えて「データベース」と称するなら、専門教科「情報」程度に難しい。
        • 情報システムとしての側面で「データベース」を考えるなら、利用と影響について実習ではなく、座学と知識で学ぶべきですよね。
    • 「各科目は,原則として,同一年次で履修させること。」とあり、高校1年生で1単位、2年生で1単位という受講方法が原則禁止された。生徒指導と密接に関連する「情報モラルの涵養」を考えると、むしろ高校1年〜2年の2年間をかけて学ぶ方がよっぽどいいのに、何故だろうか。
  • 数学
    1. 数学Iに統計が入った。案にはコンピュータを使う話はないが、入っても不自然ではないと思います。
    2. 数学Aに「二進法」が入った。「二進数」ではなく、「二進法」というところが重要。
    3. 数学B、数学Cにあったコンピュータの活用ががっさりと消えた。(そもそも数学C自体が消えた。)
    4. 新設の科目「数学活用」では、コンピュータなどを積極的に活用した学習や、コンピュータを活用した問題の解決が重視された。ただし、全体を見ると受講者は極めて少ないと予想。

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2008年12月22日 (月)

必修か必履修か(高等学校の新学習指導要領)

さきほど発見した福井新聞のサイトに掲載されている記事ですが、「必修」という言葉が目立ちます。もし、本当に必修になっているのだとすれば、これは大きな転換です。本当に必修なのでしょうか?

報道の人が、必修と必履修の違いをよくわからずに書いてしまったということのような気がします。(2年前の「日本史は必修科目ではないから…」という記事を思い出します。)

もし、報道の方で、この文章を読んでいる方がおられましたら、御確認下さい。おそらく、必修と書いているところは、ほぼすべて必履修のはずです。本当に必修なら、高校教育の大転換ともいうべきことですよ。


必履修
必ず履修する(授業を受ける)こと。
必修
必ず満足ができる成果をだすこと。なお、現行の高等学校学習指導要領には必修科目は存在しない

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高等学校の新学習指導要領発表!

というニュースを、ついさきほどラジオで聞いたんですが、文部科学省のwebサイトには全く掲載されてないです。高校の教科「情報」の先生も、大学の情報科教育法関係の教員も、みんな早く知りたいのに。とりあえずは、Google News で「学習指導要領」を検索して記事を探してみましたが、情報科については全く無視されていますね。


追記

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2008年12月15日 (月)

geli で暗号化ファイルシステム

暗号化ファイルシステムというのは、正しいパスワードを入力しないと、ファイルシステムを読むことができなくなるというセキュリティ上非常に優れた仕掛けのことです。これを導入しておくと、万一、ノートパソコンやサーバーが盗難に遭って、そのHDDを他のパソコンの増設ドライブとして取り付けられたとしても、その中身を読みとられることがなくなります。

僕の場合は、サーバーはICカード暗証番号認証の部屋(大学全体のサーバーと同じ部屋)に設置しているので暗号化ファイルシステムを使用していませんが、ノートパソコンの場合は、そうはいきません。で、いままでは FreeBSD on VMware Player on Windows XP Pro という環境で、個人情報を含むファイルをおく vmd ファイルを、Windows XP Pro のファイルシステム暗号化で保護していました。これはこれで特に困らない仕組みだったのですが、このファイルをバックアップするということになって、ちょっと困ってしまっていました。このファイル自体は Windows XP のファイルですから、外部にバックアップをしようとすると暗号が自動的に解除されてしまうのです。ということで、いままでは FreeBSD の rsync などを利用して、大学のサーバーの上にバックアップを作っていました。でも、最近 SD memory カードが急速に価格低下をしていて、これをバックアップメディアに使いたい…と思ったところで、いままでの枠組がうまくいかないということになりました。

そこで、いろいろ調べたところ geli を利用した暗号化が、今回僕が望んでいることを実現する一番いい方法だということがわかりました。ということで、自分への備忘録をかねて作業内容をメモしておきます。

  1. FreeBSD を boot
  2. Kernelを再構築する。定義ファイルに
    device crypto
    options GEOM_ELI
    を含むようにする。
  3. FreeBSD を shutdown
  4. Windows XP 上で SD メモリカードを認識させ、 FATでフォーマットする。
  5. qemu を利用して vmdk ファイルを SDメモリカードに作る(E:\hogehoge\ugougo.vmdk とします。)。一応、カード容量の 90%にした。
  6. OSの属性を記述する vmx ファイルをメモ帳で開いて、SDメモリカード上のファイル名を指定する。
    ide1:1.present="TRUE"
    ide1:1.fileName="E:\hogehoge\ugougo.vmdk"
  7. FreeBSD を boot
  8. さきほどの vmdk が、例えば ad3 などとして認識されていることを確認する。( /var/log/messages )
  9. geli デバイスを構築(以下、意味を考えずにコピペしないで!)
    # geli init /dev/ad3
    Enter new passphrase:
    Reenter new passphrase:
    # geli attach -d /dev/ad3
    Enter new passphrase:
    GEOM_ELI: Device ad3.eli created.
    GEOM_ELI: Encryption: AES-CBC 128
    GEOM_ELI: Crypto: software
    # newfs -U /dev/ad3.eli
    .................
    GEOM_ELI: Detached ad3.eli on last close.
    # geli attach /dev/ad3
    Enter new passphrase:
    GEOM_ELI: Device ad3.eli created.
    GEOM_ELI: Encryption: AES-CBC 128
    GEOM_ELI: Crypto: software
    # mkdir /SDCARD
    # mount /dev/ad3.eli /SDCARD
    # mkdir /SDCARD/tatsumi
    # chown tatsumi /SDCARD/tatsumi

    以上です。これで、 /SDCARD/tatsumi の下に、バックアップをとることができるようになります。しかも、このドライブには Windows 上では巨大ファイルが1つだけしかないですが、そのなかは FreeBSD で暗号化されているので、仮にこのSDメモリカードが盗難に遭っても geli で使用している暗号化が破られない限りは、情報漏洩については大丈夫です。なお、SDメモリカードの類は読み取りは高速ですが書き込みは遅く、また、書き込み回数が一定回数を越えるとメディアが駄目になります。ですから、あくまでもバックアップメディアとしての位置付けにするのが正解です。

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2008年12月14日 (日)

八百長事件と地域通貨

大相撲の八百長疑惑問題は、いろいろあってひと段落したという感じですが、この八百長問題を見ていて個人的にいろいろなことが気になりました。特に気になったのが「八百長の定義」です。おそらく、「金銭とひきかえに勝負に負けてあげること」が八百長の定義だろうという気がしますが、では、これが金銭でなく、別の何かと引換だった場合でも八百長というのだろうか?ということについては誰もはっきりと答えてくれてないと思います。

例えば、どこかの国のあるスポーツ団体には、その団体の中でのみ通用するポイント制度があったとします。そして、そのポイントは紙にかかれて紙幣のように流通できるとします。例えば、ある年配の選手がいて、観客動員の都合上、どうしても勝ちたいのに、急に風邪を引いたり捻挫をしたりして、どうしても勝つことができなさそうなとき、その人は自分が若い頃に得たポイントを使い、大事な試合に勝つことができるとします。逆に、そのときの負けた人はポイントを得ます。さて、このとき「このポイントは金銭とは絶対に交換できない」という条件があった場合、それでもこの試合を八百長とよべるのでしょうか?多くの人の間隔は「実力ではないのだから八百長」というでしょう。そうなるともはや「金銭とひきかえに」という最初の定義は崩れることになります。

では、このポイントが紙幣として流通せず、選手の心の中にのみ存在していた場合、それでもこれは八百長でしょうか?つまり、例えばAという監督(相撲なら親方)が、自分が引退するちょっと前の有名選手だった頃、諸事情で若手のBに勝たせてもらった。それから数年後、Bはどうしても勝たないといけない。それなら、Aは自分のチームの選手(相撲なら、部屋の若手力士)に「おい、Bに負けてやれ」ということをいうことは八百長でしょうか?ということです。こういうことを突き詰めていくと、「情けは人のためならず(巡り巡って自分のため)」という言い伝えは、八百長を増長する言い伝えであって、よろしくないということになるでしょう。でも、実際には「情けは人のためならず」という言い伝えはとっても重要で、こういう言い伝えを無意識のうちに覚えている人達の行動が社会を潤滑に動かすのではないでしょうか?

そして、こういう交換不可能な「情け」の世界を外国人選手(相撲なら外国人力士)に開放してしまったために、八百長疑惑だの、八百長疑惑でっちあげ問題だの、面倒なことが起こっているような気がするのです。そんなことを考えていたら、もっと地域通貨のことを勉強したくなってきました(しないけど)。地域通貨は閉じた社会では循環性を良くする機能をもっていますが、一方で開放性に弱い仕組みです。一方、インターネットの世界、とりわけ2ちゃんねるのような開放系掲示板と、SNSのように閉じた世界、そして、大手SNSのように本人は閉じていると思い込んでいる開けた世界などがあます。八百長疑惑のことを考えていたら、なぜか地域通貨の話題になってしまいました。不思議だ。

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キーワードで理解する最新情報リテラシー第2版(情報解禁)

大学初年度の情報関係の入門授業の参考図書として企画して、2006年12月に日経BPから出版した「これだけでわかる最新情報リテラシー」の改訂版を、年末にお届けできることになりました。今年夏頃から出版社さん、ライターさんと打合せをしながら作っていたのですが、漸く完成。書名はちょっとだけ変わって「キーワードで理解する最新情報リテラシー第2版」となりました。価格は、諸般の事情で1,200円と200円アップしてしまいました。申し訳ないです。初版本は大変好評でしたが、その中でもいくつか御要望があり、それにはできる限りお応えできるようにしました。主な改訂点は以下の通りです。

  • 紙質を変更して、とってもとっても軽くなった。(厚さはあまり変わりません。)
  • 大学での授業実態に合わせてコンピュータの仕組みの項をまとめた(その付近は項目数が減った)。
  • コンピュータ関連企業として「Microsoft」という項が増えた。
  • 他にもいくつか分割された項がある。
  • 各項目の関係図がわかる図(いわゆるマンダラ図)を入れた。
  • そのほか、内容のうち2006年から2008年で変更になったものには修正をした。

一家に一冊常備して頂きたいというのはオーバーですが、むかしの「ぴあマップ」などのような本になることを願って作っています。(なお、高等学校向けは初版と同じように、一般書店でなく別の流通ルートで御入手可能です。)

PS: 「某本その1(12月3日解禁予定)」とはこれのことです。

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2008年12月10日 (水)

報道各社のニュースの見出しを読むのは難しい

Googleニュースで学力国際比較調査を調べてみました。

ほめ讃え、微増
TBS News
数・理の国際学力、日本は上位維持
時事通信
授業拡充前に成績改善=07年国際調査
朝日新聞
日本の子どもの得点微増 数学・理科の国際調査
歯止め、横ばい
47NEWS
中2理科、世界3位に向上 学力低下「歯止め」と文科省
MSN産経ニュース
日本の理数3~5位、小中の学力低下に歯止め 国際調査
中国新聞
子どもの学力低下に「歯止め」 07年国際教育調査
東京新聞
日本、学力低下歯止め? 中2理3位に上昇 小4算理後退4位
日本経済新聞
日本の小中学生、理数学力横ばい 国際学力テスト
毎日新聞
国際数学・理科教育動向調査:日本、理数学力下げ止まり 小中3科目改善査
問題視
NHK
理数の学力 上位でも課題残る
読売新聞
学習意欲低い、日本の中学生…理数科の国際比較調査

見出しを読むのって難しいですよね。

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