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2009年7月24日 (金)

「二進数」ではなく「二進法」

まず、「〜〜数」というときは、それは「数」か「数の集合」か「数の集合を定義づける性質」を表すのであって、「数の表記」を表すものではない。例えば、ネピアの数や、オイラー定数などは、性質ではなく数そのものを指す言葉である。また、 1/3 を十進法で書くと 0.33333... となるが、三進法で書けば 0.1 で終る。つまり、何進法を用いているかで表現は異なる。このように「有理数」を「整数同士の比の値になり得る数」と定義しておけば、何進法で書いているかによらず、数の性質としてその数を定義付けることができる、といえる。他にも、フィボナッチ数といえばフィボナッチ数列の中に登場する数のことであり、「数」としての性質である。メルセンヌ数も同じことがいえる。

だが、「情報」の教科書にはしばしば「二進数」や「2進数」「十進数」「10進数」という言葉が登場する。特に「10進数の53を、2進数に変換せよ」というのは、上に述べたことからすると全く意味不明だ。おそらく、「10進法で53と書かれる数を2進法で書け」という設問のつもりだろうけれど、こんな言葉使いでは、数値と数表記の独立性を混乱させてしまい、ちゃんと教えておけばわかる生徒でも、わからなくなってしまう。(もちろん、僕が関わった教科書には「2進数」「10進数」という言葉は(例外を除いて)でてこない。)

さて、文部科学省のサイトにある「新しい学習指導要領」を開いて、「進数」で検索すると0件、「進法」で検索すると1件見つかる。でも、「進法」は数学の指導要領のところにあるだけだ。このことから、学習指導要領の「情報」の部分を書いた人達は、上記のことがわかっているんだろうな…と思っていたのだが、よく見るとそれは僕の早合点でした。既に説明会で配布されている「情報」の学習指導要領解説の暫定版を見ると「進数」が1箇所生き残っていた。で、もう少し調べてみたらこうなりました。


進法進数
数学 指導要領 10
数学 指導要領解説90
情報 指導要領 00
情報 指導要領解説(暫定版)01

ちなみに「情報 指導要領解説(暫定版)」の1箇所は、「社会と情報」の情報のディジタル化にある「2進数による表現」。(実は、現行学習指導要領解説を見ても、「情報C」に「2進数」が2箇所、「10進数」が1箇所ある。)でも、今までの流れを見ると明らかに「2進法」と書くべきところを「2進数」と書いているようだし、それに、数学と情報は連携も必要なので、(暫定版)がとれるときには、ここが「2進法表記」になっていることを祈るのであります。

ついでに、 wikipedia へのリンクも張っておきます。

「指導要領解説」にはパブコメ制度がないので、ここ(ブログ)に書いてみました。

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2009年7月22日 (水)

EuroLogoは終了→改名して "Constructionism"

2007年に参加した EuroLogo という「ロゴ」の国際研究会ですが、次回は名前を「構成主義」に変えて実施されるそうです。こんなメールがきていました。

Dear EuroLogo 2007 friends,

Please check out the updated website for Constructionism 2010!

http://www.aup.fr/news/special_events/constructionism2010.htm

(後略)

とりあえず日本語に翻訳しておくと、以下の通りです。

名称
構成主義2010
日程
2010年8月16日(月曜)〜20日(金曜)
場所
アメリカ大学(フランス・パリ市内)
The American University of Paris
投稿締切
2010年2月28日

何かを話そうという人は、いまから準備しないといけないんでしょうね。

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2009年7月19日 (日)

追加:統計教育と情報教育

昨日の発表資料に、その後の質疑応答を反映させて、さらに配布用にいろいろ加工(文字を小さめにデザインしなおしたり、その他いじったりした)スライドを作成しました。しばらく、ここ↓公開?しておきます。

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2009年7月18日 (土)

統計教育と情報教育

「日本統計学会の教育問題連絡会で特別講演をしてきました」と書くと格好よさそうですが、情報教育や、統計教育と情報教育の連携についての小さな会議に参加してきました。参加者は、情報処理学会側の3名を合わせて合計20名ほどでしたが、参加されていた先生方は、統計教育の専門家の先生方なので、その意味では「特別講演」にふさわしいものだったような気がします。

コトの発端は、約2年前、情報処理学会に、理数系学会教育問題連絡会というところから「参加しませんか?」という声かけを頂いたことです。理数系学会教育問題連絡会というのは、日本数学会とか、日本物理学会とか、日本化学会とか、その他多数の学会の中で、教育に関心がある人達が学会の違いを越えて集まっている「学会連合」のような場所です。情報処理学会に声がかかったのは、いわゆる科学オリンピックの一つに「情報オリンピック」があり、それを情報処理学会が後援していることが理由だろうと推測しています。で、この連絡会に日本統計学会の統計教育問題の委員会の先生も参加しておられ、久野先生や僕と顔見知りになり、統計教育と情報教育の連携について、意見を述べる機会を与えて頂いた…ということなのでした。

会場は、統計数理研究所。地下鉄広尾駅下車、有栖川公園の道路向にありました。なんだかなんだかオシャレな街をギコチナク歩き到着しました。

まず、久野先生(情報処理学会・初等中等情報教育委員長)からは、日本の情報教育、特に高校の情報科がどのようにできてきたかという話と、現在抱えている問題、そして、新学習指導要領に関する話題の説明がありました。

辰己(情報処理学会・初等中等情報教育委員)からは、高校の現場にはひどい先生がいっぱいいること、そのせいで3Dグラフとか大好きな生徒が増産されていること、それを正常に戻すには、統計と情報の教員の連携が重要だということ、分散や標準偏差を計算するときに、表計算ソフトの関数機能を使うことを教えてしまうと(いろいろな意味で)危険である…などを説明しました。

また、奥村先生(情報処理学会・初等中等情報教育委員)は、講演時間を設けられてはおりませんでしたが、適宜、最も的確なコメントを出して下さいました。

プ会と同じように途中でいろいろ質問OKにしたので、もちろん議論が沸騰して、とても勉強になりました。ありがとうございました。特に高校の数学科教員でも、大学生時代に「統計」をあまり学んでいないため、中学校と高校の数学で「統計分野」が必履修になっても、それを十分に教えられない先生が多いことを伺って、「やはり、どこも同じか!」と思いました。

それから、今回の発表資料を作りながら気になり始めたのですが、2010年の中学校3年生から、中学校新課程の数学「資料の整理」を先行実施で学習するようになります。高等学校の数学も、これに対応して先行実施されるのですが、高等学校情報科には先行実施の処置がありません。中学校数学科の統計分野の内容を見ていると、これを学んだ生徒が高校に進学する2011年春までには、高等学校情報科の先生は、正しく統計を理解して、教える方法も研究しておくべきと思いました。

ところで、グラフリテラシー、つまり、「グラフを適切に読み解き、グラフを適切に発信する」という能力って、数学科のみで学ぶのでもなければ、情報科のみで学ぶのでもないですよね?この辺は、連携をするべき箇所だと思います。いかがでしょうか?


【2009/07/19 10:52追記】この日に配布した資料について記事を書きました。

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2009年7月14日 (火)

アプリケーションのオンライン版といえば、コレだ!

今朝から世間では、

というニュースが流れていますが、我々の回りでも、オフィスとは全然違うソフトのオンライン版の話題が沸騰中です。(ちょっと大げさ?)

まず、大学入試センターの「情報関係基礎」で採用されているDNCLという言語があります。 東京農工大学の「情報」入試でも、TUAT-LE という言語がありますが、ほとんど DNCL と同じです。

DNCLはもともと、試験でどの言語を学んできた人でも公平になるように…ということを目的としたかどうかは知りませんが、 普通の平易な日本語で書かれた疑似プログラミング言語だったのです ところが、DNCLのインタプリターというのが作られてしまいました。その名は「PEN」といいます。

で、この辺↑までは、数年前までの話なので、すでにご存知の方には新しい情報は何もないのですが、そこになんと、 今朝「PEN オンライン版」が加わりました。これでパソコンに Java さえ入っていれば、インストールをしなくても PENを動かすことができるようになりました。

まだα版ということなので、表示がおかしかったり挙動がおかしかったりするところがありますが、 逆にいえば、多くの人が使ってみて、そういうところを作者に連絡すれば、安定したバージョンに改良されていくことでしょう。

で、この話、最後にびっくりするオチを。

PENのオリジナルを開発したのは「PENの中の人」さんですが、そのソースをオンライン版に書き換えたのは、ドリトルの開発者である兼宗先生です!すばらしい!!でも、そうなると動作不具合レポートって、どちらに送ればいいのかな?

オンライン版のオフィスよりも、皆様こちらに御注目を。

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