統計教育と情報教育
「日本統計学会の教育問題連絡会で特別講演をしてきました」と書くと格好よさそうですが、情報教育や、統計教育と情報教育の連携についての小さな会議に参加してきました。参加者は、情報処理学会側の3名を合わせて合計20名ほどでしたが、参加されていた先生方は、統計教育の専門家の先生方なので、その意味では「特別講演」にふさわしいものだったような気がします。
コトの発端は、約2年前、情報処理学会に、理数系学会教育問題連絡会というところから「参加しませんか?」という声かけを頂いたことです。理数系学会教育問題連絡会というのは、日本数学会とか、日本物理学会とか、日本化学会とか、その他多数の学会の中で、教育に関心がある人達が学会の違いを越えて集まっている「学会連合」のような場所です。情報処理学会に声がかかったのは、いわゆる科学オリンピックの一つに「情報オリンピック」があり、それを情報処理学会が後援していることが理由だろうと推測しています。で、この連絡会に日本統計学会の統計教育問題の委員会の先生も参加しておられ、久野先生や僕と顔見知りになり、統計教育と情報教育の連携について、意見を述べる機会を与えて頂いた…ということなのでした。
会場は、統計数理研究所。地下鉄広尾駅下車、有栖川公園の道路向にありました。なんだかなんだかオシャレな街をギコチナク歩き到着しました。
まず、久野先生(情報処理学会・初等中等情報教育委員長)からは、日本の情報教育、特に高校の情報科がどのようにできてきたかという話と、現在抱えている問題、そして、新学習指導要領に関する話題の説明がありました。
辰己(情報処理学会・初等中等情報教育委員)からは、高校の現場にはひどい先生がいっぱいいること、そのせいで3Dグラフとか大好きな生徒が増産されていること、それを正常に戻すには、統計と情報の教員の連携が重要だということ、分散や標準偏差を計算するときに、表計算ソフトの関数機能を使うことを教えてしまうと(いろいろな意味で)危険である…などを説明しました。
また、奥村先生(情報処理学会・初等中等情報教育委員)は、講演時間を設けられてはおりませんでしたが、適宜、最も的確なコメントを出して下さいました。
プ会と同じように途中でいろいろ質問OKにしたので、もちろん議論が沸騰して、とても勉強になりました。ありがとうございました。特に高校の数学科教員でも、大学生時代に「統計」をあまり学んでいないため、中学校と高校の数学で「統計分野」が必履修になっても、それを十分に教えられない先生が多いことを伺って、「やはり、どこも同じか!」と思いました。
それから、今回の発表資料を作りながら気になり始めたのですが、2010年の中学校3年生から、中学校新課程の数学「資料の整理」を先行実施で学習するようになります。高等学校の数学も、これに対応して先行実施されるのですが、高等学校情報科には先行実施の処置がありません。中学校数学科の統計分野の内容を見ていると、これを学んだ生徒が高校に進学する2011年春までには、高等学校情報科の先生は、正しく統計を理解して、教える方法も研究しておくべきと思いました。
ところで、グラフリテラシー、つまり、「グラフを適切に読み解き、グラフを適切に発信する」という能力って、数学科のみで学ぶのでもなければ、情報科のみで学ぶのでもないですよね?この辺は、連携をするべき箇所だと思います。いかがでしょうか?
【2009/07/19 10:52追記】この日に配布した資料について記事を書きました。
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